【生死を分ける】大地震がきたら「10秒以内」にやるべきたった1つのこと
2024年1月1日に発生した能登半島地震から1年が経つ。南海トラフ地震や首都直下地震など巨大地震の脅威も去らぬ中、断片的な防災知識ではなく最先端の科学技術や専門家の知見に基づいた正しい防災知識を身につけたいと考える人も多いのではないだろうか。 本記事では、池上彰総監修『いのちをまもる図鑑』(ダイヤモンド社)で第2章「自然・災害からいのちを守る」の監修を務めた危機管理の専門家・国崎信江氏に「アップデートすべき防災知識」を聞いた。 家で過ごす時間が増える年始、防災対策を見直してみては?(取材・構成/杉本透子) 【この記事の画像を見る】 ● 「地震がきたら机の下に潜れ」が間違っているワケ ――『いのちをまもる図鑑』では「大地震がきたときテーブルの下に潜るのはNG」と指摘されていました。これはなぜでしょうか? 国崎信江氏(以下、国崎):大地震が発生すると固定されていないテーブルも激しく動いて凶器になりかねません。キッチンにいたとしたら、食器棚などが倒れてくる危険もあり、テーブルに潜るより廊下など周りにモノがない場所に逃げるほうが安全です。 家のダイニングテーブルにしろ、学校の机にしろ、「固定されてないもの」は危険です。防災科学技術研究所が行った実験で、震度6強の地震で学校の教室がどうなるかをシミュレーションした映像があります。大きく揺れ始めてすぐに教室中の机が激しく動き、脚が持ち上がって半数くらいは横転してしまいました。現実に突然大きな地震が発生したとして、子どもたちは机がバタバタと倒れる中でそこへ潜ることができるでしょうか? 頭を下にすることで、かえって机に頭をぶつけてケガをする恐れもあります。 ――確かに危ないですね。学校でも「地震がきたら机の下に潜れ」という指導はなくなっているのでしょうか? 国崎:いえ、この科学の知見はまだ教育関連では周知が広まっておりません。訓練でいまもなお「机の下に潜れ」と教わっています。机の下にもぐることだけが身を守る唯一の解と捉えられないように、国が行っている最先端の科学技術の知見が教育現場に浸透してほしいと思っています。 ――固定されていないテーブルが危険ということですが、ガッチリと固定されていれば潜っても大丈夫でしょうか。 国崎:建物自体の耐震性が高く、さらにテーブルの脚がすべて固定されているという条件下であれば比較的よいかもしれません。ただ、結局「安全なテーブル」という定義がないんです。テーブルの素材もガラス製などは危ないと言えますが、一見頑丈そうな素材であってもつくりや強度、さまざまな条件によっても違いますから、「このテーブルならいい」ということは判断が難しいです。 ● 建物の耐震性が低ければ机ごと押しつぶされる 国崎:一つ大事なことは、建物の耐震性が低い場合、机ごと押し潰される危険があることです。日本は防災知識が乏しく、「机の下に潜ればなんとかなる」と思っている方がいらっしゃいますが、大地震の揺れはすさまじく家が倒壊するとすべてが押しつぶされてしまいます。家中の重みが体にのしかかってくると到底支えきれず、人も亡くなってしまう恐れがあるのです。 ――これまでの震災でも、圧死や窒息死で亡くなった方が多くいらっしゃいます。 国崎:過去の地震を検証した報告では、建物が倒壊するまであまり時間の猶予がないことがわかっています。地震が発生した瞬間、今いる建物の耐震性が低いのであれば、テーブルの下に潜るよりもできるだけ早く外に出たほうが命が助かる確率は高いということです。 ――建物の耐震性が低いとわかっていたら、とにかく外に出るということなんですね。自宅の耐震性はどうやって調べられるのでしょうか。 国崎:「新耐震基準」が導入されたのが1981年(昭和56年)6月1日で、それ以前に建築された建物は耐震性が不十分である可能性があります。81年や82年に完成した家でも、81年5月以前に建築確認が取られていれば危険な場合があります。それから2000年6月にも耐震基準が改訂されていますね。 ただし、2000年以降に建てた家だから必ずしも大丈夫とも言えません。例えば2000年に建てられた家は現時点で24年が経過していますよね。その間にシロアリ対策をしているかどうかなど、メンテナンス次第で耐震性は大きく変わるので、「2000年以降に建てたから大丈夫」というものもないと私は思っています。 新耐震基準を満たしていない家は、自治体に申請すれば無料で耐震診断が受けられこともあります。診断の結果、耐震性が不十分であれば耐震改修工事の補助制度がある自治体もあります。無料耐震診断の申し込み条件に当てはまらず自費で耐震診断を受ける場合は、費用は20~30万ほどといわれています。 ※本稿は、『いのちをまもる図鑑』についての書き下ろしインタビュー記事です。 『いのちをまもる図鑑』第2章監修者 国崎信江(くにざき・のぶえ) 危機管理アドバイザー。危機管理教育研究所代表 女性として、生活者の視点で防災・防犯・事故防止対策を提唱している。国や自治体の防災関連の委員を歴任。『10才からの防犯・防災』(永岡書店)や『おまもりえほん』(日本図書センター)などの監修もつとめる。
国崎信江/杉本透子