「アマゾン」勤め語る男と1日2時間ビデオ通話、結婚の話も…1750万円振り込んだロマンス詐欺被害女性
恋愛感情を逆手に取って、金を要求したり投資を持ちかけたりするロマンス詐欺。茨城県内でも被害が多発し、その総額は11月末までに計約4億7000万円に上る。1700万円以上をだまし取られた女性が取材に応じ、後悔を語った。(市川莉瑚)
「友達になろうよ」。7月中旬、水戸市の女性(50)に「順其自然」と名乗る男性からSNSでメッセージが来た。
女性は中国の出身。シングルマザーとして育ててきた一人娘が2年ほど前に大学を卒業して家を出た。「話し相手がいなくて寂しい」とSNSでパートナーを探していたところ、「俺も中国人。仲良くしよう」と接触してきたのが先の男だ。最初は不審に思ったが、熱心なアプローチが続き、やりとりはLINE(ライン)に移行した。
男は香港にある物流大手「アマゾン」の子会社に勤めていると名乗り、社員証や香港の永住者資格の在留カードの写真も送ってきた。2人は次第に昼も夜も毎日何十回もメッセージを送り合ったり、1日2時間ほどのビデオ通話をしたりと互いに心を許していった。
ある日、「一部の人しか知らないイベントがある。アマゾンのサイトでギフト券を買えば、利益を受け取れる」と電話で持ちかけられた。そのサイトは本物のように見えた。
男の案内に従って、試しにサイトを操作すると、日本円にして約27万円の利益が上がったように表示された。信じた女性は12回にわたり計約1750万円を指定の銀行口座に振り込んだ。
男とは結婚の話も出ていた。香港で一緒に暮らす計画まで立てた。男に言われた通り、仕事も辞めた。「お金をためて家を買って一緒に暮らそう。俺が一生を背負って幸せにする」という言葉を完全に信じ切っていた。
8月9日、利益分のお金を引き出せず、カスタマーセンターの職員を名乗る人物とチャットでやりとりをしていた時、男からメッセージがあった。「申し訳ないけれど、お金は返ってこない。自分は詐欺グループにいて指示されている」。皮肉にも、その日は男が来日して初めて会う約束をしていた日だった。