新幹線が停まるのに、埼玉「本庄早稲田駅」がいまいち栄えていないワケ 開業20年なのになぜか
若年層流出問題
新都心構想の失敗は、期待された人口増加を実現できなかった点に如実に表れている。 2010(平成22)年に8万1889人だった本庄市の人口は、2020年には7万8569人(4.1%減)まで減少している。新幹線駅の設置にもかかわらず、人口減少を食い止めることができなかったのである。2016年時点での「本庄市人口ビジョン」の推計では、人口は2040年には約6万5200人になると推計している。 本庄市がまったく魅力に欠けた地域かといえばそんなことはない。労働生産性(事業従業者ひとりあたりの付加価値額)を業種別に見ると、製造業の労働生産性が全国および埼玉県を上回っている。また製造業は競争力と雇用吸収力ともに高い。 農業に関しても、耕地面積が畑作を中心に県平均を超えており依然として活発だ。さらに公園などの施設も充実しており、保育園は待機児童数ゼロを維持している。 このようにポテンシャルの高い都市にもかかわらず、高校3年生へのアンケートでは、 「進学希望者のうち約3割が東京での就職を希望する」 など若年層を中心に転出超過が続いているのが、本庄市の現状だ。
早稲田ブランドと都市活性化
本庄市は念願の新幹線駅を獲得しながらも、開発面で後手に回る20年あまりを送ってきた。早稲田大学の影響力により駅そのものは実現したが、新都心を実現するまでの力は持たなかったのだ。 早稲田大学のブランド力は住宅地の人気に一定の貢献をしているものの、それだけでは地域全体の発展には不十分だ。本庄市が今後の発展を目指すならば、先に記したような潜在的な魅力を最大限に生かしつつ、新幹線駅の利便性を高めることが不可欠である。 本庄市では、市街地の立地適正化のため、旧市街地の「まちなか再生」「新しい魅力と活力あるまちの創造」に加え「多様なライフスタイルの実現」などを掲げている。居住の誘導策としては、民間宅地開発における道路整備への補助や、空き家の建て替え補助、空き家除去後のポケットパーク化を展開している。 星卓志氏・野澤康氏・松村叡英氏・池上文仁氏による論文「都市構造の再編に向けた立地適正化計画の効果的運用に関する研究」(『日本建築学会計画系論文集』第86巻第780号)では、この施策を 「本庄駅周辺においては都市機能誘導区域が約118haであるのに対して居住誘導区域が約291ha、本庄早稲田駅周辺では両者とも約154haと一致させており、上記基本方針実現への姿勢が色濃く表れている」 と、分析している。