17歳安楽宙斗が銀メダル 日本男子初快挙も悔しさ隠さず「圧倒的に負けた。ダメダメな登りでした。完敗です」前半ボルダー首位もリードで逆転許す
「パリ五輪・スポーツクライミング男子複合・決勝」(9日、ルブルジェ・スポーツクライミング会場) 【写真】半端ない力と執念 垂直の壁に必死にへばりつく安楽 17歳の安楽宙斗(JSOL)が合計145・4点でスポーツクライミング男子初のメダルとなる銀メダルを獲得した。 前半のボルダーでは第1課題を8人中唯一の一発完登“一撃”で決めると、7人が誰も攻略できなかった第2課題も時間ぎりぎりで完登に成功した。第3、4課題は完登できず、4課題中2完登。同じく2完登だったダフィー(米国)とは1点差、ロバーツ(英国)とは5・2点差の接戦で、後半のリードに向かった。 リードでも高度を伸ばしたが、金メダルが確定するホールドの手前で落下。リードは5位にとどまり、リードを3位にまとめたロバーツに逆転を許した。安楽は試技を終えて、悔しそうな表情を浮かべたが、その後、勝者のロバーツをたたえ、抱擁を交わした。 試合後は「2位で、う~ん。表彰台は最低限の目標だった。ボルダーほぼ同点で、リードで勝負だったんですけど、圧倒的に負けたなという感じです。去年の世界選手権よりリラックスして臨めたが、ボルダーでの疲労の切り替えが…。ダメダメな登りだった。完敗という感じです。本当に金メダルを狙って準決勝からこなしてきた。悔しいです」と、率直に明かした。 五輪初出場となる18歳の安楽。23年に初参戦となったW杯ではボルダー、リードともに年間総合優勝という日本人初の快挙を達成し、メダルの期待を受けて臨んだ。 7月の日本代表の結団式では、「一番になるために五輪に出る。そのために残り1カ月、さらに集中して練習する」と強い決意を示していた。 小学2年の時に、家から徒歩数分の場所にあったグリーンアローボルダリングパーク八千代店で競技を始めた。昨季初参戦したワールドカップ(W杯)では、ボルダーとリードの2種目で年間総合優勝に輝くなどいきなり頭角を現したホープ。同年に2種目の年間総合優勝を果たしたのは日本勢初の快挙でもある。 武器は脱力した軽やかな登りで、“フワフワクライマー”として知られる。ユース時代に力を入れて我慢することが苦手だったことから、「ほぼ腕は伸ばして、あんまり力を使わないようにしていた」と培われた技術。成長につれてつけた力も加わり、最強の長所となった。 柔道女子48キロ級の今大会金メダリストの角田夏実(SBC湘南美容クリニック)も通っていた県内の進学校・八千代高の高校3年生。得意科目は数学で、「単純な暗記とかじゃなくて、『この問題だったらこういう解き方ができるかな』と線でつなげて覚える」ところがいいという。「(競技も)ムーブの組み立てで結構、次こうだからここに足を上げるとかはあるので、それに似てるんじゃないかなとは思う。(数学も競技も)単純に登るんじゃなくて論理的に考えられるのが好き」と競技に生かされている。 ◆安楽宙斗(あんらく・そらと)2006年11月14日、千葉県八千代市出身。小学2年生でスポーツクライミングを始め、ユース世代から注目されると、21年にユース世界選手権はリードで優勝。翌22年の同大会でも連覇した。23年W杯では参戦1年目でボルダーとリードともに年間総合優勝。日本人初の快挙となった。168センチ。