東京、大阪に続く第3の特捜部「名古屋特捜」くすぶる不要論 法曹志望者減少で再燃も
平成17年には、弁護士資格の名義貸しをして収益を受け取ったとして弁護士法違反と組織犯罪処罰法違反の罪で現職議員を起訴。昭和63年には、砂利船業界に有利な国会答弁と引き換えに現金を受け取った参院議員を辞職直後に在宅起訴している。
政界絡みではないが、平成2年に発覚し「戦後最大の経済事件」といわれたイトマン事件を捜査したのも、大阪特捜だった。
一方、名古屋特捜が捜査対象としてきたのは、地元の地方政界が中心。捜査に絡みしばしば不祥事が取り沙汰される東京や大阪と違い目立った「失点」こそないが、存在意義は示せていない。
現職の警察官僚は、名古屋特捜の捜査について「地元警察と競合するようなものばかりで非効率的な状況だ」とした上で「地検には警察を指揮し、起訴するかどうか判断する仕事がある。すみ分けを徹底すべきではないか」と提案する。
■効率化は急務
«名古屋地検特捜部を廃止して東京地検および大阪地検の特捜部に集約すべきとの意見もあった»
大阪地検特捜部の証拠改竄(かいざん)事件を機に開かれた「検察の在り方検討会議」は平成23年3月、検察改革の指針を定めた提言書で、検察内部で長年くすぶっていた名古屋特捜不要論を、正面から取り上げた。
検察改革に関与した法務省関係者も「政界の浄化という国民の期待に応えるには、特捜を最高検に集約するか、東京地検に一本化した方がいいとの意見は改革議論の中でもあった」と振り返る。
法務省によると、今年の司法試験の受験者数は3779人と、過去10年で半減。将来の法曹界志望者、ひいては検事の志望者も減少が見込まれる中、検察庁でも先を見据えた人材再配置が課題となっている。
同様の課題を抱える警察庁では昨年、「警察組織全体から捻出した人的リソースを重点的に投入する」として、警察署内の部門間や複数の警察署間の人員の統合を進めることを決めた。ある警察官僚は「捜査現場こそ人材の再配置による効率化が急務だ」と話す。
法務省関係者は「特捜部の統廃合案はあくまで一例に過ぎない」と断った上で、「弁護士業界でも人工知能(AI)を一部で導入するなど、法曹界も人材不足を補うために時代の変化に追いつこうと必死。人員が潤沢とはいえず事件処理に追われている検察庁でも、人材の重点的な再配分が課題だ」としている。(大島真生)