東京、大阪に続く第3の特捜部「名古屋特捜」くすぶる不要論 法曹志望者減少で再燃も
地方検察庁特別捜査部-。数々の政財界事件を手掛けてきた通称「特捜部」は、東京地検や大阪地検だけでなく、名古屋地検にもある。国会議員の摘発といった耳目を引く事件を手掛けていない「第3の特捜部」は、一部で不要論がくすぶってきた。人手不足を背景にさまざまな業界で「人的資源の再配分」が叫ばれる中、検察庁でも組織の合理化を求める声が上がっており、不要論が再燃する恐れもある。 【グラフでみる】過去10年の新司法試験受験者数 ■滑り出しは上々も 特捜部は終戦直後の昭和22年、東京地検に置かれた旧軍需物資の隠匿を取り締まる隠退蔵事件捜査部が前身。24年に「特別捜査部」の名称で再出した。検察関係者の間では「特捜」「マルトク」などと呼ばれる。 現在は3地検に設置されており、大阪地検には32年に置かれ、名古屋地検では平成8年に創設されている。 名古屋に3番目の特捜部が置かれたのは、冷戦終結に伴い、極左暴力集団などによる公安事件が減少したことが背景にある。検察庁は8年、全国13地検にあり、警察が扱う公安事件を担当してきた公安部を東京、大阪、名古屋を除いて特別刑事部に改変。同時に、名古屋地検に特別捜査部を新設した。 名古屋特捜の発足に際し、法務省刑事局総務課は「政官財界が絡む事件捜査の体制を充実強化する」と説明。発足の年には、愛知県豊橋市の競輪場工事で建設会社に便宜を図っていた元市長が県警捜査2課に収賄容疑で逮捕された事件を巡り、建設会社側から請託(依頼)があった事実を名古屋特捜が突き止め、より罪の重い受託収賄罪で起訴するなど、上々の滑り出しを見せた。 ■中心は地方政界 「特捜の使命は、汚職を中心に政界の犯罪を摘発することだと言っていい」。ある検察OBは、こう強調する。 近年、中央政界に切り込む大型事件を主に手掛けているのは、過去にはロッキード事件やリクルート事件を手掛け「最強の捜査機関」の異名を持つ東京地検特捜部だ。 過去5年で起訴された元職を含む国会議員14人は、すべて東京特捜が捜査。令和2年にカジノを含む統合型リゾート施設(IR)をめぐる汚職で現職議員を起訴したのを皮切りに、今年1月には自民党派閥パーティー不記載事件で現職議員3人を起訴・略式起訴したのも記憶に新しい。 過去にさかのぼれば、大阪地検特捜部も国会議員を立件している。