生産性世界一のデンマーク人が実践する「仕事は厳しいもの」が覆る働き方
日本社会においては「仕事は厳しいもの」と思われがちです。しかし、国際経営開発研究所が行う「ビジネス効率性」ランキングで過去4年連続1位のデンマークでは、仕事においても小さな楽しみを見出すことが大切にされているといいます。 【写真】日暮いんこさんが撮影した、デンマークの風景 デンマーク在住の日暮いんこさんが目撃した「デンマーク人の働き方」について、書籍『幸せな国・デンマークでの気ままな生活 北欧、暮らしてみたらこんな感じでした』より紹介します。 ※本稿は、日暮いんこ著『幸せな国・デンマークでの気ままな生活 北欧、暮らしてみたらこんな感じでした』(大和出版)を一部抜粋・編集したものです。
仕事はあくまで生活の一部
デンマークの社会において、仕事とプライベートの境界線は明確に引かれています。もちろん職場によって多少の違いはあれ、一般的には職場での付き合いが日本ほど深くありません。仕事仲間はあくまで仕事仲間であり、職場の飲み会やイベントも比較的少ないのが特徴です。 では、仕事終わりにデンマーク人はどのように過ごすのでしょうか。 多くの場合、彼らは家族や学生時代からの友人との時間を優先します。また、スポーツクラブやサウナクラブで地元の仲間と過ごすこともあります。 仕事に過度に集中すると、プライベートまでも仕事一色になりがちです。しかし、人間関係のほとんどが職場関連で占められてしまうと、何か問題が起きたとき、精神的に不安定になる可能性があります。 仕事以外のコミュニティを大切にし続け、充実感や幸福感が得られる居場所を複数確保しておくことは、安定して幸福度高く暮らすための重要なポイントの1つであるようです。
楽しくするために何ができる?
デンマークに住んで気づいたことの1つは、彼らが仕事や日常生活において「小さな楽しみ」を大切にしているということです。 ありふれた事柄でも、自分流のちょっとした楽しみを加えることや、リラックスして物事に取り組むための工夫を自然にしている人が多いことに気づきました。 「仕事は厳しいもの」「楽しむ暇があったら、もっとストイックに向き合って生産性を上げるべきだ」と思われがちですが、むしろ「楽しむことが高い生産性に繋がる」のかもしれません。 例えば、私が社内研修に参加したある日のこと。そこで目にしたのは、まるでゲーム大会のような光景でした。 スクリーンに映し出されたクイズを見ながら、社員たちがスマートフォンやタブレットを手に、ワーワー楽しそうに騒いでいます。 これは、北欧の学校や企業でよく使われている「Kahoot!(カフート)」というものでした。即席でクイズ大会が開催できるプラットフォームで、参加者は各自のスマホでエントリーし(アプリ不要でとても簡単です)、自分の解答ボタンとして使うことができます。 この日の研修では、IT部門が自分たちの仕事内容や最新プロジェクトについて4択クイズを作成していました。 クイズの内容は、「開発にかかる平均期間は?」「最近導入されたソフトウェアの名前は?」といった業務に関するものから、「IT部門のお気に入りの社食メニューは?」といった楽しいものまでさまざま。 チーム対抗で競い合いながら答えていくうちに、IT部門の苦労や工夫、どのように自部門と協力できそうか、話しかけたいときに使えそうな小ネタまで、楽しみながら効率的に情報を吸収できました。 一見「レクリエーション」のようですが、同じ内容でも、退屈なスライドとともに一方的に紹介するよりも、ずっと部門間の明るく気楽なコミュニケーションが促進できていました。 必ずしも、人を巻き込む必要はなく、1人で仕事をする際においても同様です。 例えば、私の友達は、苦手な事務作業をリズミカルにやるためのプレイリストを持っていたり、家では禁止している大好きなコーラを、職場では1日1本までOKとする自分ルールを楽しそうに守っていたりしました。もちろん全員が全員、ものすごく仕事を楽しみながらやっているというわけではありません。 しかしながら、このように「小さな楽しみ」を入れられる余地を見つけようと、前向きに仕事に取り組み、工夫しようとする姿勢でいることが、ストレスを軽減し、持続的な高い生産性の維持に大きく役立っているように思います。
日暮いんこ