ウクライナ戦争は戦争末期へ、ロシア軍の肉弾戦がいよいよ限界に
■ 1.ロシア軍の奇妙でちぐはぐな攻撃 ロシア軍は今、わずかな軍事目標達成のために、これまでにない最大の損失を出し続けている。 【グラフ】ロシア軍は今、わずかな軍事目標達成のために、これまでにない最大の損失を出し続けている ウクライナへの侵攻当初の攻撃実績などから見れば、当初ロシアはウクライナ全土の占領、あるいはキーウ政権を倒すという軍事目標を立てて攻撃していた。 その時の兵士の損失は、現段階よりもはるかに少なかった。 グラフ ロシア軍兵士の損失推移と作戦段階 侵攻当初のことを今思い返せば、ロシア軍としては壮大な地域範囲を攻撃し、「大きな損失が出た」と判断し、当初の作戦を変更し縮小したのだろうと思う。 だが、現在の損失と比べると、損失は最も少なかったのである。 侵攻当初の損失は月に5000人ほどであったのだが、ドネツク地域での「肉挽き攻撃」では、月に4から4.5万人の損失を出している。 実に9倍である。
■ 2.奇妙でちぐはぐな攻撃の実態 ロシア軍の軍事目標やその構想は当初は大きかったが、現在は小さく局地的なものになっている。 軍事目標と損失の関係を見ると、一般的に考えて目標や構想が大きければ損失は大きくなり、小さくなれば損失も小さくなる場合が多い。 ところが、ロシアはウクライナの全域を攻撃しているときに損失が最も小さく、現段階でドンバスの狭い範囲を攻撃している時に最大の損失を出しているのである。 ロシア軍の実態は一般の状況とは逆の状態であり、あまりにも極端だ。 このことから、ロシア軍の現段階での攻勢は、費用対効果が逆転している奇妙な攻撃なのである。 このロシア軍の攻撃の実態を解明するために、約3年間の戦いを参考にして、まずロシア軍の目標と攻撃構想を侵攻当初から現在まで、特徴がある4つの段階に区分する。 そして、それらがどのように変化してきたのか、またそれぞれの段階での損失の増減との関連について分析する。 その結果、ロシア軍のこの奇妙な作戦の実態と、ロシアが受けている痛み、どれほど無駄な戦いを実行しているのかを明らかにしたい。