「内申書を点数化」? 大学入試改革は今どうなっているのか
あくまで委託調査で “研究中”
高校版全国学力テストである高等学校基礎学力テスト(仮称)で「知識・技能」を、センター試験に替わる学力評価テストで「思考力・判断力・表現力」を、個別大学の入試で「主体性・多様性・協働性」を、それぞれ評価のポイントに据えることで、全体として幅広い学力(学力の3要素)を判定しようというのが、高大接続改革における大学入試改革の眼目でした。 個別入試改革に関して、文科省は2016年度、具体的な評価方法を探ってもらう委託事業を始めました。採択された5件では、それぞれ複数の大学がコンソーシアム(連合)を組み、「国語科」「地理歴史・公民科」「理数分野」など特定分野に絞って、評価手法の開発に取り組んでいます。 一部報道にあった「内申書の点数化」というのは、実は、このうち関西学院大学を代表とするコンソーシアム(大阪大学、早稲田大学、同志社大学など8大学が参加)の「主体性等分野」開発で行われているものです。そこでは、教育委員会や高校と連携し、調査書や提出書類、面接を活用する方法などを探っています。あくまで「開発」であり、成果が全国で使えるものになるかどうかは、コンソーシアムでの研究成果に掛かっています。 確かに高校の調査書は、高校間格差のため評定がそのまま使いづらい上、記述欄も十分ではなく、現行のままでは選抜資料として使えないという指摘は、大学関係者に根強くあります。システム会議の最終報告でも、高校時代の活動報告書や入学希望理由書、入学後の学修計画書といった書類を提出させることを提言しています。既に、京都大学が16年度から始めた特色入試で、「学びの設計書」など多様な書類を基に選抜を行っている例も出ています。 共通テストよりも個別入試での評価方法の検討を急ぐべきだ、との意見は、高大接続改革答申を検討していた中教審の部会で、既に出されていました。「高大接続改革は待ったなしだ」(中教審会長やシステム会議座長を務めた文科省高大接続改革チームの安西祐一郎リーダー=日本学術振興会理事長)という割には、個別入試改革が各大学任せになっている状態は、残念なように思えます。
------------------------------- ■渡辺敦司(わたなべ・あつし) 教育ジャーナリスト。1964年、北海道出身。横浜国立大学教育学部を卒業後、「日本教育新聞」記者を経て1998年からフリーとなり、教育専門誌やサイトを中心に執筆