下位指名の社会人投手、古田島成龍がパ・リーグ史上初ルーキーになるまで
故障などで調子を落としたことをバネに成長
ようやくドラフト候補として対象となると感じたのは社会人1年目のことである。強く印象に残っているのが2022年6月10日に行われた都市対抗野球南関東地区予選の対Honda戦だった。 ルーキーながら先発のマウンドを任せられると、5回を投げて3失点と負け投手になったものの、そのボールは明らかに大学時代と比べても力強いものになっていた。当時のノートには以下のようなメモが残っている。 「テイクバックで右肩が下がるフォームは変わらないが、体幹が強くなり安定感は明らかにアップしたように見える。しっかりリリースでボールを抑え込むことができており、抜けるボールも少ない。ストレートはコンスタントに145キロを超え、数字に見合うだけの威力を感じる。 変化球も緩急をつけるカーブは落差があり、カットボール、チェンジアップの小さい変化のボールもしっかり操ることができる。 (中略) 上背はないが姿勢が良く、真上から投げ下ろすため打者に与える威圧感も十分。もう少し力みを抜いて強く投げられるようになれば面白い」 古田島の後にこの年のドラフトで指名を受けることになる高野脩汰(現・ロッテ)も登板しているが、ストレートの勢いに関してはまったく見劣りしなかったことをよく覚えている。高野を視察に訪れていたスカウトにもこの時の古田島の投球は強く印象に残ったはずだ。 社会人2年目になると完全にエース格へと成長。都市対抗の本選こそもうひとつだったものの、1年間を通じて成績を残し続けて見事にドラフト指名を勝ち取った。 大学、社会人でも主戦だったが、その時々に合わせてリリーフで登板することもあり、そういった経験もプロで活かされているはずだ。 また高校3年夏、大学4年秋と大事な時期に故障などで調子を落としたことをバネにして成長してきたことも大きな強みである。 2025年は相手からのマークも厳しくなることが予想されるが、高校、大学、社会人で培ってきた粘り強さを生かして、チームを勝利に導くピッチングを見せてくれることを期待したい。
TEXT=西尾典文 PHOTOGRAPH=西尾典文