億り人が教える「減益決算でも買い」と考えられる銘柄
株式投資で1億円以上を稼ぎ出し、個人投資家から目標とされる存在の「億り人」。では、億り人はどのように資産形成を行ってきたのか。その投資の極意をひもとく連載企画が「億り人の『極秘投資術』」です。 今回は「湘南投資勉強会」で個人投資家向けのIR説明会を開催するなど、活発な活動をされているkenmoさん。2012年頃から株式投資をスタートさせ、わずか5年で資産1億円を突破しました。 前編 ではkenmoさんの投資遍歴などについてお聞きしましたが、後編では現在の投資手法や足元で注目している銘柄などについて聞きました。 現在、私が実践している投資手法「順バリ決算モメンタム投資」とは、『会社四季報』やチャートを参考にしつつ、決算内容を見て銘柄を選ぶという投資法です。 この方法にシフトしたのは、コロナ禍で世の中が大きく変化した2020年です。変化の大きい世の中で、決算が上昇トレンドの起点となることが多く、そのタイミングで素早くエントリーすることで大相場に乗るのが得策と判断したためです。 有価証券報告書や『会社四季報』で情報が出たときには、すでに株価に織り込まれていることも多いため、決算で出た開示情報を判断材料にし、チャートの形を見つつエントリーします。 必ずしも新高値をつける必要はありませんが、チャートが上向きになっていることが最低条件です。そして上昇トレンドが続いている間は保有し続けますが、上昇トレンドが崩れたと判断したときは売却して、利益を確定するのです。 ■上昇トレンドを維持できる「変化」に注目せよ ただし、決算で好材料が出て株価が上昇していれば何でもいいというわけではありません。 好材料が出て、株価がいよいよ上昇し始めたという銘柄は有望です。一方で、過去の決算からすでに株価が上昇トレンドにある銘柄は、好材料が出たとしても、そこからさらに上昇し続けられるのか、という点を考える必要があります。 永遠に上昇し続ける株価はありませんから、ここの見極めは重要です。その意味で、決算情報とともに、チャートが銘柄を選ぶうえでの大きな判断材料になります。 決算情報で注目しているのは「変化」です。例えば、売上高の伸びや粗利率・販売管理費率の変化です。最近はIR姿勢の変化や、株主還元に対する考え方の変化なども重要視します。 もちろん売上高や営業利益、経常利益、PER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)などの定量的な情報は重要ですが、それ以上に「変化」を探すことに重きを置いています。 「売上高・利益の変化」を見るうえでは、重要な着眼点があります。それは非常に良い決算が出たとして、その利益が特需的なものなのか、外部環境によるものなのか、それとも内部要因によるものなのかを切り分けて見ることです。 一過性の受注や土地の売却などの特需はあくまでも今決算のみの利益ですから、利益の継続性という点で当てになりません。外部環境の変化によってもたらされた利益も、企業の努力でコントロールできる余地は少ないと考えられます。 やはり一番大事なのは、内部要因による利益ということになります。例えば、社内のコストコントロールや組織改革によって生み出された利益は、持続性という点で今後も期待できるでしょう。 これは『会社四季報』の業績予想を読み解くうえでも重要です。仮に、会社発表の予想と四季報予想に差分があった場合、先ほどのように要因を切り分けて分析することで、より投資対象の選別に役立ちます。 ■「人手不足」の中で採用競争力・育成力に注目 加えて、もう1つ注視している要素があります。それは人材採用や教育がうまくいっているかどうか、ということです。人材採用や教育に関してしっかりした戦略を持っている企業かどうか、経営陣が納得できる説明をできるかどうか、という点を重視しています。 何しろ今は人手不足の時代ですから、優秀な人材を獲得し、教育できるかどうかが、企業の成長期待でも重要になります。人材採用を強化したことで利益が落ちたとしても、新規採用した人材をしっかり教育できる組織であれば、4、5年後に戦力として育ち、その企業の売り上げ増につながっていくはずです。人材戦略を疎かにしているような企業に未来はありません。 例えば、コプロ・ホールディングス(7059)は、建設業界向けの人材派遣業を営んでいる企業ですが、2023年3月期決算は売上高が前年比で伸びているにもかかわらず、減益で終わりました。 これは人材採用を積極化したためであり、このとき、採用した人材が2024年3月期、2025年3月期の売り上げ増、利益増につながる見通しです。このような減益決算で一時的に売られた銘柄は「買い」ともいえるでしょう。 ちなみに人材活用については、オープンワーク(5139)が運営している「OpenWork」というサイトに社員の口コミが書き込まれています。無料登録で口コミを見ることができるので、材料の1つとしてチェックしておくといいでしょう。 個人投資家向けIR説明会などで、人材不足や採用などについて経営陣に直接聞くことも非常に有用だと思います。 ■億り人注目の「成長企業」とは? 前編 でも触れましたが、これまで私は投資手法を幾度となく見直して今に至っています。そして、おそらくこれからも投資手法を見直しながら、投資を続けていくと思います。 実際、「順バリ決算モメンタム投資」も、2020年から2022年のように、世の中の変化が著しい場合にはうまく機能したのですが、最近は決算トレードをする投資家が増えているせいか、決算時に好材料が出ても、買う投資家がほとんど見られないというケースもあります。 そこで最近は、投資手法を2つに分けて運用しています。メインはあくまでも順バリ決算モメンタム投資で、銘柄数を絞り、数カ月から数年という時間軸で保有します。それと同時にサブとして、株主優待取りや打診買いの銘柄も含めた長期投資のポートフォリオも持っています。 こちらはあくまでも分散投資ですが、1銘柄の投資金額は最低単元分から、300万円程度までまちまちです。こちらの保有銘柄数は、120銘柄程度になります。 メインとサブの投資比率は7対3程度です。あくまでもメインは順バリ決算モメンタム投資ですが、1つの投資手法に固執することなく、儲からなくなったら別の投資手法を開発し、新しい相場環境にアジャストさせていくのが、私の投資スタンスです。 さて、最後に中長期目線で注目している銘柄についても触れておきたいと思います。その銘柄がFCE(9564)です。業務改善用RPAソフトでDX(デジタルトランスフォーメーション)支援を行うと同時に、学校や学習塾、企業などを対象とする教育研修を行っています。 この会社の魅力は直近業績が伸びていることはもちろんですが、組織マネジメントが非常にうまいと感じています。社員が満足度や生産性高く働ける会社で、若手をしっかり育成していると外部から観察していて感じるのです。 先述のように、今後は優秀な人材の獲得競争がより激しくなることが予想されます。その中で、人を使い捨てるような企業は生き残ることは難しいでしょう。新NISA枠も活用しながら、中長期で保有していきたいと考えています。 (構成:鈴木雅光) ※当記事は、証券投資一般に関する情報の提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。
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