ディズニー「ファストパス」導入が永遠に変えたこと、アトラクションは「早い者勝ち」だったはずだったのに
そこでディズニーの出した答えが、のちに「ファストパス+」と呼ばれるようになる待ち時間短縮パスだった(パンデミック中はファストパス+の発券は中止され、さらに2021年8月に正式に廃止されて、代わってさまざまな有料の優先搭乗サービスが導入された)。 ゲストは希望のアトラクションまたはショーを3つまで選び、事前にパスを取得する。パスは無料だが、指定時間枠内に使わなければならない。行列は大嫌いというゲストや事前に計画を立てておきたいというゲストは、パスを活用すると長蛇の列の一部をスキップできる。
パスを取得したゲストは、そこらを見物したり、あまり待たずに乗れるものを楽しんだりし、時間が来たらお目当てのアトラクションに出向いてファストパス+専用の短い列に並んで満喫する、というしくみだ。 パスを3枚使い切ってしまったら、追加で1枚取得できる。ただし一定時間置かないと使えないので、その間子供たちは空いているショーを見たり、ソフトクリームを食べたりする。そして時間が来たらお目当てのアトラクションに出向き、パスを使い切ったらまたもう1枚……という具合に、疲れ切るか財布が空っぽになるまでこれが続く。
ファストパス+は、世界各国のディズニーリゾートによって多少の違いはあるものの、混雑をある程度緩和し、ゲストの経験を向上させる効果があることが確かめられている。 だがファストパス+のほんとうのマジックは、人々をパークに長い間滞在させる効果があることだ。その間に、ただ行列待ちをしていたときよりも多くのお金を使わせることができる。 まる1日の滞在中にいくつかのアトラクションを短い待ち時間で楽しむことができるが、アトラクションの合間は1時間か2時間ある。その間、何をするのか。
乗り物と乗り物の間はかなり離れており、その道中は子供たちの欲望をそそるようにじつに巧みに設計されているのだ。ついおねだりしたくなるミッキーのグッズ、飲みたくてたまらなくなるパイナップル・スムージー、等々。 ディズニーはデューク大と同じような難題に直面していた。彼らは人気アトラクションへのアクセスという希少資源を持っている。このアクセスは、従来は早い者勝ち方式で割り当てられてきた。これはすべての人に同じ扱いをする公平なシステムに見えた。