【谷繁元信】巨人はベンチの采配と選手のプレーが一致せず サヨナラ勝ちでも苦しい要因
<巨人3-2広島>◇28日◇東京ドーム 最後は丸のサヨナラホームランで決まったが、序盤の巨人の攻撃で気になった点がある。初回、3回と、いずれも先頭の丸が安打で無死一塁。だが、その後の采配が対照的だった。 【写真】9回、暴投で同点を許し、ぼう然とするバルドナード 初回は2番吉川に送らせ、1死二塁をつくった。先発はエース戸郷。少ない点数でも勝てると、ベンチは考えたのだろう。ところがヘルナンデス、岡本和と外野フライを続け、先制点はならなかった。すると、3回は吉川に送らせなかった。初球、2球目と外のボール球を引っ張りにいき、ファウル。ベンチの指示だろう。さらに、カウント1-2から丸が走ったが、吉川は打ち上げて左飛。走者を進めることもできなかった。 丸は、かなりいいスタートだった。吉川が同じアウトでも転がしていれば、1死二塁。結果論かもしれないが、続くヘルナンデスの二塁打で先制点が取れていたはずだ。結局、この回も0点に終わった。 なぜ、巨人ベンチは初回と3回で攻撃のパターンを変えたのか? おそらく、初回の岡本和の打撃がそうさせたのだと思う。3-1のバッティングカウントから簡単に左飛を打ち上げた。4番の打ち取られ方を見て、3回はクリーンアップの一振りにかけるのではなく、大きくチャンスをつくっていった方がいいと判断したのだろう。同じアウトでも内容が悪くなければ、3回も吉川に送らせ、1点を取りにいったのではないか。 今の巨人は、ベンチの采配と選手のプレーが一致していない。だから、苦しい戦いが続く。この日で言えば、初回の岡本和や3回の吉川のアウトの内容に、それが見えた。ベンチはサインを出す際、「こうなるだろう」と予測を立てる。そのとおりに選手が動ければ攻撃にリズムが生まれ、得点の可能性は高まる。一致させていくには、選手がベンチのサインになんとか応えられるようにしていくことが大事になる。 広島は9回、先頭で小園が出た後、坂倉が送りバントを決めた。堂林はヒットは打てなくても二ゴロで走者を進めた。それが、暴投での一時同点につながった。1つの凡打でも意味があった。今の広島のしぶとさを象徴していた。(日刊スポーツ評論家)