【F1】2024年の10大ニュース(前編)「1998年以来26年ぶりに名門マクラーレンが頂点に立った」
2024シーズンF1総括10大ニュース(前編) 史上最多24戦のカレンダーで幕を開けた2024シーズンのF1は、バーレーンを皮切りに世界各国を9カ月間かけて転戦し、最後はアブダビで閉幕した。 【写真】F1ウィリアムズ育成ドライバー・松井沙麗(13歳)インタビューカット集 1950年に始まり、75回目を迎えた2024年のF1世界選手権は、各地でどんなドラマを生んだのか。2009年からF1を現地で全戦取材するジャーナリスト・米家峰起氏に2024シーズンのトピックスを10点、ピックアップしてもらった。 ※ ※ ※ ※ ※ (1)フェルスタッペン「4年連続」ドライバーズ王座獲得 2024年のドライバーズタイトルは、大方の予想どおりマックス・フェルスタッペン(レッドブル)が獲得した。2021年の初戴冠から4年連続4度目の王座獲得を果たし、アラン・プロストとセバスチャン・ベッテルの記録に並んだ。 しかし、これほどまでに厳しいタイトル争いになるとは、誰が予想しただろうか。 開幕から10戦7勝を挙げて、今年もレッドブルとフェルスタッペンの快進撃が続くと思われた。だが、シーズン中盤から開発によるマシン挙動の悪化とライバルの追い上げが進み、レッドブルは大混戦のなかで競争力を失った。雨の第21戦サンパウロGPで復活勝利を挙げるまで、第11戦オーストリアGPから実に10戦もの間、勝利から遠ざかることになってしまった。 その間にランド・ノリス(マクラーレン)が台頭し、シャルル・ルクレール(フェラーリ)も好走を見せ、一時は「今年のタイトル獲得は現実的ではない」と弱気な姿勢を見せる場面すらあった。第19戦アメリカGPや第20戦メキシコシティGPでは、ノリスとのバトルにおけるドライビングに対して厳しい目が向けられ、ルール改定を巡って孤立することもあった。
しかしその苦境のなかでこそ、フェルスタッペンのドライバーとしての腕が光った。特に雨のサンパウロでのドライビングとコンディション変化を読みきった戦略は、まさしくチャンピオンズドライブだった。 中盤戦以降のレッドブルRB20は、サーキットによっては4番目のマシンでしかなかった。だが、チームはグラム単位の軽量化や冷却口を塞いで空力効率をわずかでも上げるなど、重箱の隅を突くような地道な改良を続け、0.01秒単位のゲインを積み重ねていった。 フェルスタッペン自身も着実にポイントを重ね、終わってみればシーズン後半の10戦で獲得したポイントのノリスとの差はわずかに15点。決してシーズン序盤の7勝で稼いだ貯金で逃げきったのではなく、シーズン全体を通して死力を尽くして戦い抜いた結果だ。 「これまでで最も厳しいチャンピオンシップだった」 フェルスタッペン自身がそう語るシーズンだったからこそ、フェルスタッペンのすごさがあらためて浮き彫りになった。 (2)マクラーレン大躍進「26年ぶり」チーム王座獲得 2024年最大のトピックのひとつが、ランド・ノリスの躍進であり、マクラーレンの復活だ。 昨年の開幕時はマシン開発に失敗し、最下位からのスタート。そこから技術体制を刷新して、シーズン中2度の大型アップデートで上位に進出した。 2024年、開発サイクルの後れが響いてマシン熟成不足のままの開幕となる。だが、第6戦マイアミGPで大型アップデートを投入して一気に躍進。さらに夏休み明けの第15戦オランダGPでも大型アップデートでライバルを大きく引き離し、シーズン後半戦は明らかに最速のマシンだった。 ノリスは第6戦マイアミGP、そして2年目のオスカー・ピアストリも第13戦ハンガリーGPで初勝利を果たす。最終的にふたりで計6勝をマークし、マクラーレンにコンストラクターズタイトルをもたらした。特にハイダウンフォースサーキットでの速さは際立っており、レッドブルのお株を奪う空力性能を見せた。