朝ドラ『おむすび』中間総括評論 B'z「イルミネーション」は“平成”をどう照らしたか?
「イルミネーション」は何を照らしているか?
したがって『おむすび』が抱える、緒ジャンルの複数性と同時多発性を抱えた物語構造は、それ自体「平成」を表明しているかのようだ。 前述したように、「イルミネーション」のオープニング映像が流れるとき、結はギャルになる=カラフルに染まることで平成を受け入れて成熟する。そして「イルミネーション」がB'z=平成の象徴であるならば、このカラフルさ=緒ジャンルの複数性もまた「イルミネーション」である。実際のイルミネーションが複数の光源を同時点滅させるように。 オープニング映像の後半部(0:57~)で結は、栄養士として再び「“白”衣」を身にまとう。ただし栄養士としての「白」は、女子高生としての「白」とは意味が異なるだろう。単に何色にも染まっていなかった(進路を決められずにいた)結ではなく、自ら主体的に「白」色を選び取った後の結に変化しているからだ。 何色も選択できていない真っ白な結が、ギャルになる=平成の過去を受け入れる=イルミネーションに照らされることで「どんな色にも染まりうる」可能性に目覚めた後で、もう一度「白(進路)」を選択するという成長過程があのオープニング映像で示唆されている。 このようにして「平成」を生きる少女の成長物語が描かれるのだ。 結が歩むことになる複雑な成長曲線はしかし、彼女のあだ名が「おむすび」である時点で内包されていただろう。おむすびという食べ物がそもそも、あらゆる具材を受け入れ、何色にも染まりうる白米を用いた料理だからだ。 ドラマ『おむすび』の物語構造は、一つひとつのメニューが「順番」に提供されるコース料理のような単線的なものというよりは、あらゆる具材と主食が同時に存在する「おむすび」としてのありかたであろう。 参考 https://president.jp/articles/-/87170?page=1
徳田要太