“ユニクロの対極をいく”アパレル企業が、「創業から5年8ヶ月」で新規上場した納得の理由
棲み分けができず失速した「4℃」
一方、上記の北の達人のような“棲み分け”ができず、失速したブランドも少なくない。宝飾品ブランドで知られる「4℃」の例はその代表的なものだろう。 4℃の商品やブランド名は、顧客の棲み分けができていないどころか、中途半端に市場に浸透しすぎたのである。 4℃は、本来訴求したい顧客層以外の、「4℃を貰っても嬉しくない女性消費者」に知名度が浸透しすぎてしまったため、Xにおいて彼女たちから「4℃のネックレスをもらっても嬉しくない」という否定的な投稿が書かれるようになってしまった。 これは、自社知名度を高めたものの、「誰に売るか」という特定のターゲット層を明確に定めなかったため起きた悲劇と言える。
市場浸透率が低くても、ヒット商品は生み出せる
実は、yutoriの特定の「みんな」だけに売る戦略はいまのSNS環境とも相性がよい。なぜなら、現在は個々にカスタマイズされた情報が提供される時代だからだ。 XやInstagramのアルゴリズムは、その人の嗜好性に合った投稿がリコメンドされる。その点で局地的な「みんな」に訴求するブランドをつくれば、訴求したいターゲットだけに認知を図れるのだ。 市場浸透率が低くても、細かく顧客を定義し、彼らに層に刺さる戦略に振り切ればヒット商品は生み出せるのである。 そして、複数のブランドを展開しポートフォリオを構築する。こうしたyutoriのような濃いファン=特定の「みんな」に商品を売る戦略が、今後ますます重要になってくるだろう。 <TEXT/田中謙伍> 【田中謙伍】 EC・D2Cコンサルタント、Amazon研究家、株式会社GROOVE CEO。慶應義塾大学環境情報学部卒業後、新卒採用第1期生としてアマゾンジャパン合同会社に入社、出品サービス事業部にて2年間のトップセールス、同社大阪支社の立ち上げを経験。マーケティングマネージャーとしてAmazonスポンサープロダクト広告の立ち上げを経験。株式会社GROOVEおよび Amazon D2Cメーカーの株式会社AINEXTを創業。立ち上げ6年で2社合計年商50億円を達成。Youtubeチャンネル「たなけんのEC大学」を運営。紀州漆器(山家漆器店)など地方の伝統工芸の再生や、老舗刃物メーカー(貝印)のEC進出支援にも積極的に取り組む。幼少期からの鉄道好きの延長で月10日以上は日本全国を旅している
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