北朝鮮軍の「派遣」か、それとも「派兵」か…韓国情報機関の発表、事実と意見が混在
米ホワイトハウス、派兵は確認せず「数日中に説明する」との立場表明
韓国大統領室が22日、ウクライナに対する攻撃用兵器提供の可能性まで言及し、「北朝鮮軍のロシア派兵」に強硬対応を強調したが、米ホワイトハウスは派兵を確認せず、「数日内に説明する」という立場だけを示した。 大統領室はこの日も「同盟および友好国と緊密に協力」すると繰り返し強調したが、米国・英国はまだ派兵を確認していないという態度を取った。韓国の友好国であり、ウクライナ戦争で重要な役割をするこれらの国は、なぜ派兵が事実だとすぐに認めないのだろうか。「北朝鮮軍派兵説」に対する情報判断の手続きがまだ終わっていないためとみられる。 国内外の情報機関は、様々な諜報(情報生産のために多様なルートで獲得された、処理されていない資料)をまとめ、評価・解析したうえで、情報(諜報を収集、処理、評価及び解析した結果として獲得された知識)にする。その後、様々な情報を集めて総合的に融合・評価し、当該事案の真偽を明らかにして事実であるかどうかを最終的に判断する。 ウクライナ現地メディアの「キーウポスト」は4日、ウクライナ軍のミサイル攻撃により戦線で北朝鮮兵6人が死亡したと報道しており、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は13日(現地時間)の演説で「北朝鮮がロシアに兵器だけでなく兵力まで支援している」と主張した。 当初、韓国も先週半ばまで、このような北朝鮮軍派兵説に否定的な態度を示してきた。キム・ソンホ国防部次官は17日(現地時間)、ベルギーのブリュッセルで開かれた北大西洋条約機構(NATO)国防相会議の同盟国およびパートナー国セッションに出席し、ウクライナが提起した北朝鮮のロシア派兵説について「現在までは民間人スタッフ支援の可能性があるとみて追跡中」だと述べた。 キム次官は同日、NATO本部で聯合ニュースの記者に「兵士ではなくスタッフを支援した可能性があり、注意深く見ている(という立場)」だと述べた。さらに「それがスタッフなのか、それとも兵士なのかは、もう少し多くの情報が総合され融合・評価されれば(真偽が)明らかになるだろう」と補足した。 ところが「北朝鮮が支援したとしても軍人ではなく民間人」という国防部の判断は、一日で変わった。国家情報院(国情院)は18日午後、「国情院、北朝鮮の特殊部隊のロシア・ウクライナ戦争参戦を確認」という題名の報道資料を発表した。国情院は「北朝鮮軍の動向を密着監視していたところ、北朝鮮が今月8日から13日にかけてロシア海軍の輸送艦を通じて北朝鮮特殊部隊をロシア地域に輸送したことを把握し、北朝鮮軍の参戦開始を確認した」と主張した。国情院は「ロシアに派兵された北朝鮮兵士は極東地域のウラジオストク、ウスリースク、ハバロフスク、ブラゴベシチェンスクなどに分散され、現在ロシア軍部隊に駐留中であり、適応訓練を終え次第戦線に投入されるものとみられる」と説明した。 国情院が「北朝鮮軍の参戦開始確認」の根拠として提示した北朝鮮特殊部隊のロシア地域への輸送は、8~13日に行われた。キム・ソンホ次官は聯合ニュース記者と会った17日、これを把握していたはずなのに「民間スタッフを支援した可能性がある」と語った。対北朝鮮情報活動の主軸である両機関が、一日でこのように相反する情報判断をした理由について、韓国政府は何も説明していない。 国情院は18日に配布した報道資料で、関連証拠として「北朝鮮兵輸送ロシア艦艇活動」など衛星写真3枚を提示した。国情院が国防部より信頼度の高い衛星写真を独自に確保する方法はない。米国の偵察衛星と偵察機が撮った映像を情報司令部と韓米連合司令部に送れば、韓国軍映像分析官と在韓米軍が分析・判読した映像資料を国家情報院が使うという構造だからだ。 国情院は報道資料で「北朝鮮兵は現在ロシア軍部隊に駐留中で、適応訓練を終え次第戦線に投入されるものとみられる」と述べた。ウクライナ戦線から数千キロメートル離れたウラジオストクなどロシア極東地域に駐留中の北朝鮮軍がウクライナ戦線に移動する場合、参戦開始や派兵と判断できる。 国情院の主張をもとに判断すると、現在北朝鮮軍はロシアに「派遣」された状況であり、「戦線に投入されるとみられる」(派兵)は今後の状況に対する予想だ。国情院の報道資料を基準に、派遣は「事実」であり、派兵は「意見」であるため、「参戦開始確認」の報道資料には事実と意見が混在しているものとみられる。 クォン・ヒョクチョル記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )