踏み込み不足の政治刷新本部・中間とりまとめ:政治改革は国民の意識改革と一体で
中間取りまとめは派閥存続に道を開く記述に落ち着く
自民党は1月25日に臨時総務会を開き、派閥の政治資金パーティ問題を受けて設置した政治刷新本部の中間取りまとめを正式に決定した。 東京地検特捜部の捜査が一巡し、そしてこの中間とりまとめが出されたことで、自民党による同問題への対応にとりあえず「一段落」とのムードも出ている。しかしそれでは困る。国民の政治への信頼回復に向けた取り組みは、始まったばかりだ。 岸田首相が岸田派(宏池会)の解散を突然打ち出したことを受けて、雪崩を打ったように安倍派などの解散表明が相次ぎ、自民党内の6派閥のうち4派閥が解散の方向という劇的な動きとなった。 中間とりまとめでは、派閥を「本来の政策集団」へ移行させ、「お金と人事から完全に決別する」と明記されたが、派閥の解散そのものは盛り込まれなかった。政策集団という名のもとに、派閥が存続することに道を開くものだ。 派閥解消には、派閥の領袖である麻生氏、茂木氏が難色を示したとみられるが、有力派閥の反対で党総裁である岸田首相が党全体の派閥解消を決められなかったこと自体が、派閥の弊害を露呈させているのではないか。それは、派閥と党との2重構造のもと、党や政府のガバナンス(統治)が低下している、ということだ。
派閥の改革は過去と比べて後退
リクルート事件を受けて1989年にまとめられた自民党の「政治改革大綱」では、「派閥の弊害除去と解消への決意」という項目が設けられ、派閥については、「派閥と政治資金のかかわりや派閥の内閣、国会および党の全般にわたる人事への介在、派閥本位の選挙応援など、さまざまな弊害を生んでいる」と結論づけられた。 そのうえで、(イ)最高顧問は派閥を離脱する、(口)総裁、副総裁、幹事長、総務会長、政務調査会長、参議院議員会長、閣僚は、在任中派閥を離脱する、(ハ)派閥の実務者間によって、実質的にあたかも党機関にかわる意思決定と誤解されるようなことは行わない、との具体的な改革案が示されていた。 また、自民党が下野していた1994年に党改革実行本部がまとめた答申は、従来の派閥の名称を一切使わないことや、派閥事務所の閉鎖を求めていた。ところが今回の中間とりまとめでは、派閥事務所の閉鎖は盛り込まれず、「政策集団の活動を党本部で行う」という表現に留まっている。過去の派閥改革案と比べると、後退した感は否めない。 派閥は「政治とカネ」の問題とは異なる、との指摘もあるが、実際に、今回の裏金疑惑は派閥の政治パーティ券収入から生じたものであり、派閥が党のガバナンスを損ねたことが問題につながった面もあるだろう。派閥と「政治とカネ」の問題との関係性については、今後も十分に検証を進め、派閥の完全解消を含めてさらなる改革を進めることが求められる。