踏み込み不足の政治刷新本部・中間とりまとめ:政治改革は国民の意識改革と一体で
政治資金の透明性を徹底して高める必要
一方政治資金に関しては、中間とりまとめに派閥の政治資金パーティの禁止が盛り込まれ、また、政治資金規正法などの違反が明らかとなった場合、党として審査を行い、事案に応じて一定期間の活動の休止もしくはグループの解散を求める、とした。会計責任者が逮捕、起訴された場合、議員についても内容に応じて処分できる党則改正を行う考えも記された。 さらに、政治資金の透明性を徹底するため、派閥の政治資金収支報告書に外部監査を導入することも盛り込まれた。 これらの施策については、一定の評価はできるが、それでも十分とは言えない。例えば、野党が主張する、政治資金規正法を改正して、会計責任者や秘書が違反した場合に国会議員の責任を問いやすくする「連座制」の採用には、中間とりまとめは踏み込まなかった。また、裏金疑惑の舞台となった、派閥がカネを集め所属議員に配る仕組みそのものの見直しにも踏み込んでいない。 そして、政党が所属国会議員に支出する政治資金の一つである政策活動費についても、中間とりまとめに言及はなかった。政策活動費を受け取った議員はその使途を公開する必要がないため、実際には政治活動以外にも利用されるブラックボックスになっている、とも指摘されてきた。そして、政策活動費は、税金が原資の政党交付金とは異なり、政治資金パーティや企業団体献金などの収入がその源泉と見られている。
政治改革は国民の意識改革と一体で
現時点では現実味は高くはないが、「政治とカネ」の問題を終わらせるには、企業・団体によるパーティ券の購入禁止に加えて、企業・団体献金も廃止して、政治活動は政党助成金の範囲内で行えるようにし、その使途は完全に透明にする、といったことを最終的には目指すべきではないか。 さらに、「政治とカネ」の問題がなかなかなくならない背景にあるのは、選挙にはカネがかかる、という現実だ。これが改められない限り、いくらルールを厳格化しても、必ず抜け道が生まれてしまうだろう。そして、実際に選挙にカネがかかる背景には、それを当然と受け止め、時にはカネの受け取り側にも回る、国民の意識があるのではないか。 こうした点を踏まえると、国民の信頼回復のための政治改革は、政治サイドだけで進めるのではなく、国民の意識改革と一体で進めていかなければ、真に実効性の高いものとはならないのではないか。 (参考資料) 「自民派閥、カネ・人事と「決別」 改革案、パーティーは禁止」、2024年1月24日、日本経済新聞 「自民「裏金」再発防止は見通せず 議員処分、具体策欠く」、2024年1月24日、日本経済新聞電子版 「ブラックボックスの「政策活動費」 22年は自民14億円超-政治資金問題の視座⑥」、2024年1月24日、日本経済新聞電子版 「NHKニュース おはよう日本」、2024年1月25日、NHK 木内登英(野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミスト) --- この記事は、NRIウェブサイトの【木内登英のGlobal Economy & Policy Insight】(https://www.nri.com/jp/knowledge/blog)に掲載されたものです。
木内 登英