環を持つ衛星が見当たらないのは偶然の結果? 少なくとも力学的には月も環を持てることが判明
私たちはたまたま衛星に環がない時代にいる?
今回の研究を見ると、太陽系の衛星には環を持つものがあってもおかしくないという結論が得られます。そうなると、なぜ現実に環が存在しないのか?という矛盾への答えは「偶然にも、私たちは衛星に環がない時代に天文学を発展させた」ということになりそうです。 環の形成に関する力学は複雑ですが、寿命は天文学的スケールで見ればかなり短いのではないかという説があります。有名な土星でさえ、環の形成年代は4億年前より古いことはなく、1億年前未満である可能性すら示されています(※5)。仮に恐竜にガリレオのような人物(?)がいれば、環のない土星を観察したかもしれませんし、その場合「天体には環という構造物ができることがある」という発想すら思い浮かばなかったかもしれません。 ※5…ただし、この記事の執筆時点で新たに公開された論文において、年齢の推定方法に対して反論を行い、土星の環の寿命はもっと長いのではないかとする主張もあります。 また、4億6600万年前には地球にも環があった可能性が示されています。こちらは4000万年維持されたと考えられ、天文学的には短期間です。地球に環がないことをあえて指摘する場合、その回答が「たまたまないだけだ」ということになるように、衛星に環がないこともたまたまであることはあり得る話です。逆に、もし地球の月に環があったとすれば、文化や宗教は現在とは全く異なる発展をしていたかもしれません。 Sucerquia氏らは、太陽からの放射圧や惑星の磁場など、環を不安定化させ得る他のパラメーターを今回よりもさらに詳細に検討することで、もっと正確な環の寿命が判明するのではないかと考えています。それはイアペトゥスやレアのような、環の影響を受けていると思われる衛星の進化を推定する上でも重要になります。 Source Mario Sucerquia, et al. “The missing rings around Solar System moons”.(Astronomy & Astrophysics) Michelle Starr. “Wait a Minute. Why Don't Any of The Solar System's Moons Have Rings?”.(science alert)
彩恵りり / sorae編集部