住宅ローン金利の上昇で分譲住宅の価格が下がるのかを検証! 今後マイホーム購入は厳しくなるのか?
金利が1.2%まで上昇しても、借入額4200万円なら負担軽減
そこで、金利上昇と住宅価格下落の双方を考慮して試算すると図表5のようになる。 図表5 金利と借入額ごとの返済額を試算 借入額5000万円、金利0.2%の場合の毎月返済額12万3272円をベースにすると、12万円台前半の返済額ですむのは赤字で示した範囲になる。 金利:0.2%→0.4%(+0.2) 借入額:5000万円→4800万円(▲200万円) 返済額:12万2491円(▲781円) 金利:0.2%→0.6%(+0.4) 借入額:5000万円→4600万円(▲400万円) 返済額:12万1453円(▲1819円) 金利:0.2%→0.8%(+0.6) 借入額:5000万円→4400万円(▲600万円) 返済額:12万146円(▲3126円) 金利:0.2%→1.2%(+1.0) 借入額:5000万円→4200万円(▲800万円) 返済額:12万2514円(▲758万円) 金利が1.0ポイント上がって1.2%になったときに、返済額が12万円台の前半ですむには、借入額が4200万円になればいいわけで、金利が1.0ポイント上昇しても、借入額が800万円以上減少すれば、0.2%、5000万円の場合の返済額より負担は軽くてすむ。
新築住宅はコストアップ要因に満ちている
実際のところどうなるのか。冒頭の三菱UFJ信託銀行の調査のように、金利上昇が価格の低下につながるのだろうかといえば、新築住宅についてはかなり疑問符がつくのではないだろうか。 新築の分譲住宅は、(1)土地の仕入れ値、(2)建築費、(3)分譲会社の利益・経費などで構成されるが、その(1)~(3)のいずれもが大きく上昇しており、デベロッパーとしては、簡単に価格を引き下げられる環境にはない。 図表6は、マンションなどの鉄筋コンクリート造の工事原価の推移を示しており、このところ右肩上がりの上昇が続いているのがわかる。 図表6 鉄筋コンクリート造の建築工事原価指数(2015年=100) また、地価の上昇も続いている(図表7)。マンション適地とされる土地については、競争入札が当たり前になっていて、従来の相場の1.5倍、2.0倍の入れ札でないと落札できなくなっているといわれる。 かといって、ゼネコンに対して安値での受注を要請すると、オフィスに比べて利益率の低いマンションの発注を受けてくれなくなる。 図表7 首都圏と東京都区部の住宅地価指数(2000年1月=100) (3)の分譲会社の経費・利益に関しても、働き方改革や賃上げの動きが強まっており、その点も新築住宅の価格の押し上げ要因になっている。
金利が上がっても新築住宅の価格は下がらない可能性も
以上の点から、新築住宅は金利にかかわらず、価格の上昇が続くのではないかという見方もある。 つまり、金利だけが上がって、分譲価格は下がらず、負担が重くなるといった事態も十分に想定されるわけだ。 そうなると、新築住宅ではなく、割安感のある中古住宅に目を向けるなどの発想の転換が必要になってくるかもしれない。中古住宅なら需給のバランスで価格が決まるので、新築に比べて価格低下の可能性は高いだろう。 そうした点も含めて、2024年夏から秋にかけての住宅市場は大きなターニングポイントを迎えることになるのかもしれない。
山下和之