【韓国】急発進「大部分が操作ミス」 相次ぐ事故、自動車協会が説明会
韓国で自動車が意図せず加速する急発進事故を巡って、韓国自動車モビリティー協会と韓国輸入自動車協会が12日に説明会を開催した。電気自動車(EV)の発火事故と並んで国民の関心が高い急発進について自動車業界が見解を示したのは初めて。登壇した専門家は「技術的な観点から急発進が起こる可能性はゼロに近く、アクセルとブレーキを踏み間違えた『操作ミス』が原因」と指摘。その上で、踏み間違え防止装置などの導入が急務と強調した。【清水岳志】 7月1日に、ソウル中心部の市庁舎近くで車が逆走して歩道に突っ込み9人が死亡する事故が発生した。運転していた60代の男性は「車が急に加速した」として、急発進による事故を主張している。このような急発進事故が近年相次いでいることから、韓国社会では自動車の安全性に対する不安が広がっている。 そんな中、韓国自動車モビリティー協会と韓国輸入自動車協会は12日、汝矣島(ソウル市永登浦区)でメディアを対象にした「急発進が疑われる事故に関する説明会」を開催した。登壇した専門家は一様に、急発進について「99%がブレーキとアクセルを踏み間違えたヒューマンエラー」との見解を示した。 韓国自動車モビリティー協会の姜南勲(カン・ナムフン)会長は「意図しない急加速による事故が相次ぎ、急発進が疑われる事故に対する国民の不安が高まっている」とした上で、「車のブレーキの作動原理を説明し、車載型の事故記録装置『イベントデータレコーダー(EDR)』や交通事故の捜査手順について説明することで、急発進事故に対する誤解と偏見を解くのが目的だ」と述べた。 ■EDR「信頼性に疑いの余地なし」 説明会では、急発進の疑いがある事故で話題となる◇EDR◇ブレーキシステム◇事故の分析手順◇警察庁による工学的観点からの事故調査および事例――について、専門家がそれぞれの分野について技術的な説明を行った。 とりわけ、EDRは事故当時の車両のスピードやアクセルまたはブレーキを踏んだかどうかなどの運転操作が記録されるため、急発進が疑われる事故において車両の欠陥なのか、ドライバーの誤操作なのかを判断する材料となっている。しかし、急発進が疑われる事故が多発する中、ほぼ全ての事故で「ブレーキを踏まずフルアクセルだった」との記録が残っていることから、EDRの信頼性に疑問を持つ国民が増えている。 これについて、原州漢拏大学の教授で道路交通公団の交通事故調査諮問委員も務めるチェ・ヨンソク氏は「EDRは国内のみならず海外でも交通事故を分析する主要ツールとして活用され、数万件以上の分析結果によってその信頼性はすでに検証されている」とコメント。EDRへの不信感は誤解によるところが大きいと強調した。 ■踏み間違い対策は「両足で踏む」 急発進が疑われる事故でEDRとともに話題になるのが、「ブレーキが固まって効かなかった」という証言だ。これについて、大徳大学のイ・ホグン教授は「車両の重量や速度で発生するエネルギーより制動力が大きくなるよう設計されているブレーキシステムの構造上、ブレーキペダルを踏めば速度は落ちる」とし、大部分の事故はアクセルとブレーキの踏み間違いが原因との見解を示した。 また、踏み間違いを防止するための対策としては「両足でペダルを踏むことが重要」とも指摘した。自動車にはアクセルペダルとブレーキペダルを同時に操作した場合にはブレーキが優先される「ブレーキオーバーライドシステム」が搭載されているため、「急発進が疑われる場合は両方のペダルを同時に踏めばブレーキが作動する」と説明した。 ■装置搭載の義務付け急務 急発進に対する関心の高まりを受け、韓国国会では自動車事故によって消費者が被害を受けた場合にメーカーが事故車両に欠陥がなかったことを証明することを義務付ける「製造物責任法改正案」が発議された。これが成立した場合、完成車メーカーの負担が増大し、自動車産業への依存度が高い韓国経済にもマイナスの影響を及ぼす恐れがある。 さらに、専門家は「改正案が成立しても、メーカー側が提出する資料に消費者が反論するのは容易ではない」と指摘する。それよりも、急発進が疑われる事故を減らすために、日本のように自動車への踏み間違い防止装置の搭載義務付けを急ぐべきだと強調した。 日本の国土交通省は今年6月、障害物の手前でアクセルを踏んでも急加速を抑制する安全装置の搭載を義務付けると発表した。これは、国連欧州経済委員会(UNECE)が2025年6月にオートマチック車を対象とした新しい国際安全基準を発効するのに合わせた措置。韓国でも同様の議論はされているが、具体的な導入時期などは決まっていない。