気候変動で増える乱気流、日本にもあった危険ルート
<先週、激しい乱気流に巻き込まれて緊急着陸を余儀なくされたシンガポール航空の事故は、飛行機ではよく経験する乱気流がいかに恐ろしいものかを印象付けた。どうすれば避けられるのか>
空の旅では、ちょっとした乱気流はよくあることだ。激しい乱気流に巻き込まれることはめったにないが、巻き込まれた場合は命に関わる。【ダグ・ドルゥーリー(豪セントラルクイーンズ大学航空学教授)】 【動画】乱気流による揺れの激しさがありありと伝わる機内の様子を映した動画 5月21日のシンガポール航空SQ321便、ロンドン発シンガポール行きは、その危険性を示している。飛行中に激しい乱気流に巻き込まれた結果、1人が心臓発作と思われる症状で死亡、数人が重症を負った。重症を負った乗客が病院で治療を受けられるよう、航空機は進路を変更し、タイのバンコクに着陸した。 乱気流はどこでも起こり得るが、特に起こりやすいルートもある。 気候変動は乱気流の可能性を高め、乱気流をより激しくすると予想されている。実際、乱気流は過去数十年ですでに悪化していると示唆する研究結果もある。 ■乱気流はどこで起こるのか? ほぼすべての航空便が、何らかの形で乱気流に遭遇する。 航空機が、他の航空機の後ろで離着陸する場合も、前方の航空機のエンジンや翼端から発生する風が、後方の航空機に「後方乱気流」をもたらす可能性がある。 地表近くでは、空港周辺の気象パターンに関連する強風で乱気流が発生することがある。高度が上がると、他の航空機の近くを飛行している場合には再び後方乱気流が発生したり、雷雨による上昇気流や下降気流が原因で乱気流に遭遇することもある。 高高度では、予測や回避が難しい、別の種類の乱気流も発生する。いわゆる「晴天乱気流」は、雲のような視覚的兆候がない。多くの場合は、暖かい空気が上昇し、冷たい空気のなかに入り込むことで発生する。このタイプの乱気流は気候変動によって悪化すると広く予想されている。 最も基本的な乱気流は、2つ以上の風が衝突して渦が発生し、気流が乱れることで生まれる。 しばしば山脈の近くで発生する。山脈の上空では、風が加速しながら上昇するためだ。 さらに乱気流は、ジェット気流の端でもよく発生する。ジェット気流とは、高高度で地球を周回している強風の狭い帯だ。航空機はしばしば、スピードを上げるためジェット気流に乗る。しかし、ジェット気流に出入りするときは、その外側にある、より遅い風との間にある境界を越えるときに、乱気流が発生することがある。