超富裕層の「日本脱出」が加速する4つの理由【富裕層マネー専門家が解説】
● 富裕層の海外シフトが進む理由(2) 地政学リスクと台湾有事 イスラエルを中心とした中東戦争が現実味を帯びる中、石破政権が台湾有事に対応するため、防衛力強化に積極的に動くことが予想されます。今後、日本も地政学リスクにさらされ、国際情勢が緊迫する中で、富裕層が資産を守るために国外へシフトする傾向が強まる可能性は大いにあるでしょう。特に、台湾有事が現実化した場合、日本が戦争に巻き込まれるリスクは避けられません。 このような背景から、リスク分散を図るために、海外拠点を確保し、必要に応じて移住できる体制を整えることは、特に前述の超富裕層にとって必須の対策となります。そもそも、ビザなしで海外に滞在できる期間は国によって異なりますが、基本的には最長90日です。 国によっては数千万円で永住権が取得できますし、自分の子どもが戦争に巻き込まれないように海外の拠点づくりに乗り出すということは、お金に余裕があれば当然の動きといえます。日本の避暑地で別荘を持つのであれば、海外の永住権を取得して海外に拠点をつくる(もしくはその両方)というような風潮に変化していく可能性があります。 実際、2011年の東日本大震災発生直後、初期被ばくを避けるために家族を西日本や海外に一時避難させた富裕層・超富裕層が多かったのは事実です。私のお客様でも、西日本にマンションやホテルを長期間借りて、家族を一時的に避難させた方が一定数いらっしゃいました。
● 富裕層の海外シフトが進む理由(3) コロナ終息と海外移動の再開 そして、3つ目の理由として、新型コロナウイルス感染拡大に伴う厳しい移動制限が緩和され、海外への移住や長期滞在が再び容易になっていることが挙げられます。 ビザなしで滞在できる期間は限られていますが、投資家ビザや永住権を取得すれば、より柔軟なライフスタイルを実現することが可能です。ハワイのトランプタワーやザ・リッツ・カールトンのコンドミニアム保有は“超富裕層あるある”ですが、今後は不動産だけではなく永住権取得に動く富裕層も増えると考えています。 ● 富裕層の海外シフトが進む理由(4) 「言語の壁」崩壊 従来、日本人富裕層が海外移住をためらう理由の一つとして、「言語の壁」が挙げられてきました。しかし、テクノロジーの進化により、この問題も劇的に軽減されています。翻訳AIや音声認識技術の向上により、英語を含む多言語でのコミュニケーションが容易になり、海外生活が現実的な選択肢となってきているのです。 さらに、現在は多くの日本企業が海外に進出しているため、日本人の駐在員などに向けた高度な日本食材も20年前と比べてはるかに手にしやすい状況になっています。シンガポールでは、「DON DON DONKI(ドンドンドンキ)」の店舗が急増しているといいます。 また、当時は海外から日本に電話するのも一苦労で、かつ多額の電話代がかかりました。しかし、今はLINE電話などのアプリによって海外からも無料で通話ができてしまう状況です。 コロナ禍を経てリモートワークが一般化した今、経営層でかつ標準化が図れている業務や会社であれば、社長は原則海外にいてオンラインでやりとりをし、たまに日本に戻ってくるという働き方が可能になってきています。 このように、テクノロジーの進化によって、富裕層にとっての海外移住や拠点づくりのハードルは下がってきています。今後は言語の壁を感じることなく、海外での生活やビジネス展開が可能になるでしょう。