超富裕層の「日本脱出」が加速する4つの理由【富裕層マネー専門家が解説】
10月15日、衆院選が公示された。世の中の流れをうまく見極めて財を成してきた富裕層たちは、今後の日本の行方をどう見ているのか。富裕層の資産運用・管理に詳しい筆者は、これから富裕層の「海外シフト」が進む可能性があると指摘する。その理由とは。(アレース・ファミリーオフィス代表取締役 江幡吉昭) ● 超富裕層たちの 「海外シフト」が進む!? 石破茂首相は衆議院を解散、10月27日投開票で衆議院議員総選挙が実施されることとなりました。石破氏は首相就任時の所信表明演説では、独自の主張は封印して安全運転に終始しました。衆院選の結果次第ではありますが、国民からの支持が続けば、第二次安倍政権のように首相本来の掲げる政策などに舵を切る可能性はあります。 少し気が早い気もしますが、人より半歩先んじたことで富を成した超富裕層は、今後テーマになるであろう日米地位協定の変更や台湾有事に関する議論、そして反アベノミクス的なスタンスが日本にとって大きな地政学リスクや再度のデフレ沈下になる可能性を増大させる要因になり得ると考えています。 上記のような変化を前提とすると、富裕層、特に世帯純金融資産が5億円以上の超富裕層にとっては今後、築き上げた資産を保全する必要性が増します。その結果、2000年代初頭に多く見られた海外での永住権獲得を踏まえた移住や拠点づくりが、再び注目される時代が到来すると、私は考えています。
● 富裕層の海外シフトが進む理由(1) 高額な相続税問題 日本はもともと、富裕層のみならず、都内に自宅を持っているような準富裕層であっても相続税がかかる国です。理由は、基礎控除(相続税を払うか否かのボーダーラインのこと)にあります。 アメリカでは相続税の基礎控除が実質的に十数億円ほどありますが、日本では5000万円以下になることが多く、都内に自宅を保有するような一般の層にまで相続税が課されます。最高税率も55%となっており、資産に課せられる税金が高い国となっています。 石破氏はもとより反アベノミクス・増税路線です。申告所得1億円をピークに実効税率が低下する“1億円の壁”を踏まえて議論されている金融所得課税の増税も今は封印しているようですが、「増税」、特に富裕層に対する増税は、税目はどうあれ、間違いないところでしょう。 しかし、シンガポールやマレーシア、ニュージーランド、アラブ首長国連邦(UAE)など海外の多くの国では税制面での優遇措置があります。それゆえに、投資家や富裕層にとって魅力的な選択肢となっているのです。 特に、高収入の士業など世帯金融資産1億円以上の富裕層は別荘を持つ感覚で永住権や投資家ビザを利用することができます。また、会社をバイアウトしたような世帯金融資産5億円以上の超富裕層に至っては、相続税を含めた資産課税負担の軽減を図る手段として海外を視野に入れていくことになるでしょう。