AI創薬モデル実現に向けたサンプルが微小重力環境に–Space BDなどが研究
Space BD(東京都中央区)とインテージヘルスケア(東京都千代田区)は国際宇宙ステーション(ISS)の微小重力環境を活用する「高品質タンパク質結晶構造解析サービス」を連携させた共同研究を2022年4月から開始。AI(人工知能)を活用した創薬に向けたタンパク質の実験試料(サンプル)がISSに到着した。 2社の共同研究は、創薬研究での化合物の最適化の技術開発が目的。深層学習(ディープラーニング)などのAI技術を活用した創薬の技術で設計された医薬品の新規化合物と疾患に関連するタンパク質との相互作用を宇宙実験で明らかにするというもの。 ISSの日本実験棟(JEM)「きぼう」では、微小重力環境を活用して、高品質なタンパク質結晶を生成し、地上実験では得られない緻密な構造情報を取得できるとされている。この構造情報とAI創薬の技術で薬物設計で重要とされる「弱い分子間力」も考慮した化合物の最適化技術を開発するとしている。 Space BDとインテージヘルスケアの共同研究によるサンプルは、きぼうでの実験の後で地上に帰還。X線結晶の構造解析とAI技術を活用した最適化計算を予定している。 サンプルは、Space Exploration Technologies(SpaceX)の無人補給機「Cargo Dragon」でISSに運ばれた。米フロリダ州ケネディ宇宙センターからロケット「Falcon 9」で日本時間11月5日午前11時29分に打ち上げられたCargo Dragonは、同日午後11時53分頃にISSの「Harmony」モジュールにドッキングした。 米航空宇宙局(NASA)はISSに物資の輸送を委託する「商業補給サービス(Commercial Resupply Services:CRS)」をSpaceXを含む民間企業と契約している。今回のミッション「NASA 31st Commercial Resupply Service mission」(SpX-31)はミッションを運用するSpaceXにとって31回目(CRSのフェーズ2「CRS-2」では11回目)。 SpX-31には、学習院高等科・女子高等科の高校生を対象にした「タンパク質結晶化体験ワークショップ」で実際に生徒20人が結晶化実験を行ったタンパク質のサンプルも搭載されている。 SpX-31には、岩手県立花巻北高校の生徒が携わったキューブサット「YODAKA」も搭載された。YODAKAは1カ月程度をめどにISSから宇宙空間に放出される予定。1カ月程度の初期運用の後に実運用される。
UchuBizスタッフ