「スカイキャッスル」の一部は日本でも実在する

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学齢期の子どもを持つ親は、「あなたのためだから」と子どもに言い聞かせて、つい教育熱心になりがちです。ところが、そんな親の思いが、子どもにとっては大きな負担になっているかもしれません。現在放映中のドラマ「スカイキャッスル」（テレビ朝日系）では、自分のすべてを子どもの高校受験にささげる親たちの姿が描かれており、子どもに対する言動が「教育虐待」に当たるのではないかと話題になっています。教育虐待にならないよう親が気をつけるべきことなどについて、子どもの養育環境改善に取り組む一般社団法人「ジェイス」代表理事で臨床心理士の武田信子さんに聞きました。 「スカイキャッスル」では、松下奈緒さん、高橋メアリージュンさん、比嘉愛未さんらが演じるセレブ妻たちが、ありとあらゆる手を使って我が子を志望校に合格させようと奮闘します。大金をはたいて雇ったすご腕の「受験コーディネーター」に言われるまま、我が子を遅い時間まで勉強させたり、我が子が学校の成績で優位に立つよう、同級生の足を引っ張るような行為に走ったりするシーンなどが描写されました。 同ドラマは、韓国ドラマ「SKYキャッスル～上流階級の妻たち～」のリメイク版のため、SNSでは「韓国と日本では事情が違う」という声が上がる一方で、「過干渉な毒親をリアルに描いている」「自分は関係ないとは思えず、現実でも考えるべき問題が多い」などと関心の高さをうかがわせるコメントが多く見受けられます。 実際、都内の富裕層が集まる地域や、エリート校への入学を目指すような学校などでは、同様のケースが起きているといいます。武田さんは「受験コーディネーターは日本ではあまり聞かないので、韓国の習慣に寄せているようですね。ドラマなので誇張した部分はあると思いますが、日本でも富裕層の母親たちが子どもの受験で競い合って、塾の講師に札束を出す話はかつて見聞したことがあります。日本の場合は、競争の舞台は学校よりも、塾や習い事が中心ではないでしょうか」と指摘します。 「スカイキャッスル」で見られるような子どもへの過剰な教育について武田さんは、「親が子どもを思い通りに育てようとして、教育やしつけを名目に行う心理的・身体的虐待を『教育虐待』と言います。親は子どもを『教育』『管理』するよりも、学びたいことを選べるように選択肢を示して、学びを支えることが大事です。子どもの意思を尊重せずに、親がやらせるべきだと思ったことを無理強いすると、子どもは回復困難なまでに傷つきます」と説明します。 教育虐待が起こる背景については、核家族化が進んだことや、家庭間の経済格差がそのまま教育格差に直結する社会になったことが影響しているといいます。「昔は、いろいろな人が子どもを抱っこしたりして面倒を見ていましたが、今は両親だけで育てる家庭が多くなり、親の教育姿勢が直接子どもに反映するようになりました。そうすると親は必死になって子育てをするようになり、その時に自分自身の成功も目指すようになります。子どもの将来と子育ての成功イコール自分の成功だと捉えて、勝者になろうとするのです」 親から継続的かつ拒否できない学習を強いられ続けた子どもは、ストレスによって心身に大きなダメージを受け、「複雑性心的外傷後ストレス障害（CPTSD）」を発症する可能性があります。CPTSDは、自己否定、対人関係の困難、激しい感情の起伏、フラッシュバック、うつなどの症状が特徴です。