孫正義がかつての盟友に捧げた「非常識すぎる弔辞」に込められた真意
● 孫氏が読み上げた弔辞の冒頭 「とても横着で態度が大きい」 井上 そういうリーダーシップを孫さんから学んだんですね。私の過去の取材メモによると、川邊会長には3人の恩人がいたという話でしたが、誰だったのか改めてお教えください。 川邊 孫さん、宮坂さん、そして井上雅博さんですね。井上さんは、孫さんと共にヤフージャパンを創業した人ですが、サービスの作り方や経営の数字の見方、マネジメントの仕方など、経営の基本は全て井上さんから吸収しました。彼は大局観があり、数字にとても強く、けれども「怠け者」の側面も併せ持つ経営者でしたね。 井上さんはエンジニアなので、無駄をなくして自動化する方法を常に考えていました。彼が怠け者であったからこそ、様々なサービスが生まれたのだと感じました。怠け者の特性はエンジニアにとっては才能です。 井上 井上社長と会話する中で、何か印象的な言葉はありますか? 川邊 井上さんはエンジニアとして、現場の人たちとよくシステムの話をしていました。私も現場のプロデューサーでしたので、井上さんとは頻繁に会話しましたが、「君らは真面目でいいけど、その真面目さが間違った仕様で正しく作ることにつながってしまう。だから、まずは仕様が正しいかどうかを確認した上で作業を始めるべきだ」という言葉が特に印象的でした。 どんな製品も、正しい仕様であれば、間違って作っても修正するコストが少なくて済みますが、最初から間違った仕様で作ると修正に大きなコストがかかります。最初から正しい仕様にしておかないと、後で追加費用がかかってしまい、最終的には損失につながることを何度も教えられました。 また、経営者としての井上さんの言葉で印象深いのは、ライブドアがテレビ業界に進出する話が出た際、「ヤフーもテレビ事業を始めないのですか?」と質問したら、井上さんが「そんなことはしない。利益率が低いから」と即座に否定したことです。