地方中小で“進まぬDX”──伴走する地銀に立ちはだかる「4つの壁」
今後求められる展開は
地域金融機関によるDX支援の未来は、人材育成とエコシステム構築にかかっているといえそうだ。 まず、DIGITALCAMPのような専門機関との連携による人材育成の強化が急務だ。従来の銀行業務とは異なるスキルセットが求められるDX支援において、専門的な研修プログラムの重要性は高まるばかりだ。経産省の河崎室長は、ITコーディネーター資格の下位資格として、2025年からスタートするITCアソシエイトに期待する。取得費用が低く、維持費用も無料というこの新資格によって、DX人材の裾野を大きく広げたいという考えだ。 河崎室長は「法人営業に携わる人は全てITCアソシエイトを取るくらいの形で進んでいけば理想的」と展望を語る。この取り組みが実現すれば、顧客企業のデジタル化ニーズを的確に把握し、適切なソリューションを提案できる人材が地域金融機関に大量に生まれることになる。これは、地域のDX推進に大きな弾みをつけるだろう。 次に、地域内でのエコシステム構築が重要となる。注目すべき取り組みとして、岐阜県の十六フィナンシャルグループによる「ITの地産地消」がある。十六電算デジタルサービスの岩田氏は「地元のITベンダーを大事にしている。調達などもできるだけ地域で完結し地域の経済圏からお金がなくならないように、地域のIT人材もいなくならないようにしていきたい」と語る。 この「ITの地産地消」の考え方は、地域のDXエコシステム構築に大きく寄与する。地元のITベンダーを活用することで、地域の実情に即したソリューションの提供が可能になる。同時に、地域内でIT投資を循環させることで、地元IT産業の育成と雇用創出にもつながる。さらに、地域密着型のサポート体制により、中小企業のDX導入障壁を下げることも期待できる。 地域金融機関によるDX支援は、地方経済の活性化と持続可能な発展のための重要な鍵だ。人口減少や産業構造の変化に直面する地方にとって、中小企業のデジタル化は避けては通れない。その中で、地域に根差し、企業との信頼関係を築いてきた地域金融機関の役割は極めて大きい。 (斎藤健二金融・Fintechジャーナリスト)
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