立教大学の助教授が「不倫相手の教え子」を殺害して一家心中…教え子が最期に残した「メッセージ」と遺体の発見場所…事件をもとにした名作ポルノの「封印」がいま解かれた理由
実話をもとにした「幻の作品」
実話にもとづき、コロナ禍に翻弄された女性の顛末を描いた映画『あんのこと』が賛否を集めている。同じく公開中、柚月裕子原作の『朽ちないサクラ』は桶川ストーカー殺人事件とオウム真理教がモチーフになっていた。また、新左翼の連続企業爆破犯として指名手配され、みずから名乗り出た直後に70歳の生涯を終えた桐島聡についても、先ごろ映画化が発表されたばかりだ。 【画像】疑惑の大学教授を演じた男…『女子大生失踪事件』の「濡れ場」を見る…! 古今東西、いつの世も実話ベースの映画は絶えない。常に大衆の興味をそそり、世間を騒がせた「事件」ほど企画にあがりやすい。そこに「痴情」がからめば尚更である。映画というメディアは他人の不幸を味わわせ、それが感動や興奮に置換されるビジネスなのだから。 1973年9月6日、幼子をふくめた一家4人の心中から発覚した「立教大学助教授教え子殺人事件」も翌年に『女子大生失踪事件 熟れた匂い』として東映が映画化。煽情的なタイトルからも察しがつくが、いわゆる成人指定の映画であり「東映ニューポルノ」という低予算路線の1本だ。理不尽ともいえる封印事件に巻き込まれて幻の作品となっていた『女子大生失踪事件』だが、この度めでたく解禁されて、東京の名画座・ラピュタ阿佐ヶ谷のレイトショー「東映ニューポルノのDeepな世界RETURNS」で上映中である(7月4日まで)。 痴情のもつれから5人死亡という最悪の結末に至った助教授による教え子殺人事件、その犯人は大場啓仁(当時38歳)。立教大学の英米文学科を卒業し、同大の大学院から講師、そして32歳の若さで助教授となった研究者だ。 大場は教え子の女子大生(のち院生)と肉体関係を結び、ほんの遊びのつもりがのっぴきならない泥沼となり、殺人を断行。その後はアリバイの偽装工作をし、新聞に行方不明の彼女を案じる広告まで出した。疑念を抱いた大学の同僚たちに犯行を仄めかしていた大場だが疑わしきまま放置され、ついに進退きわまるや失踪……最後は伊豆半島南端の奥石廊崎展望台より身を投じる結果に。 大場の妻もまた、かつての教え子であった。父親の反対を押し切って結ばれたが、かねてより夫の女ぐせの悪さに悩まされており、不倫相手の院生と大場が一緒のところに子連れで乗り込んで修羅場となったこと、追い詰められて自殺を図ったこともあった。大場の凶行を知ったのちは、ふたたび自殺未遂を経て我が子2名を巻き添えに夫との「死」を選択。それぞれ関係者に遺書を発送しており、大場の筆には妻の意思を尊重する旨がしたためられていた。 大場に執着した院生もまた死の前に「汚色のイメージ」という遺書めいた手記を残していたと報じられており、焼却されたのち母親によって「わたしが死ぬか、失踪すれば、相手は立教大学大場啓仁助教授だ」という内容が明かされた。 だが、一家心中のあとも、なかなか彼女の遺体は見つからなかった。八王子にある立教大学教授(大場の恩師)の別荘で殺された院生は、周辺に埋められたが捜索は難航……その間もメディアは事件を報じ、およそ5ヶ月半後の74年2月28日に崖下の藪から一部白骨化した死体が掘り起こされた。