「監督、これ1位あるよ」記者はささやいた…ソフトバンクドラフト1位・村上泰斗はなぜ甲子園出場なしで“高校最強右腕”今朝丸裕喜の阪神2位を上回ったか
“ドライチ”の教え子への思い
指導者人生で初めて“ドライチ”を出し、その影響力、注目度の大きさを実感する日々だ。ドラフト翌日の指名挨拶には「30~40人ぐらい」の報道陣が駆け付け、九州在住の大学時代の先輩からは、村上が一面を飾った新聞が送られてきた。1年に、わずか12人しか手にすることのできない金看板を背負って巣立つ教え子の成功を願う。 「高校生が、今まさに日本一をかけて戦っているようなチームに入るわけなので、いきなり結果を残せとは言えません。でも、立ち居振る舞いや取り組みは、1位指名にふさわしいものを見せてほしい。福岡だけでなく、九州全域に影響力のあるチームで、村上本人も『応援される選手になりたい』と言っているので、これからどんどんファンを増やしていってほしいですし、それは入団前の今から始まっているとも思います。あとは、東にもよく言うてるんですけど、息の長い、1年でも長くプロの世界にいる選手になってほしい。長くプロの世界で続けられると、自ずと結果も付いてくると思うので」 ドラフトの2日後には、神戸弘陵のオープンキャンパスが開催された。野球部の見学会には、村上も顔を出し、参加した中学生たちが「あれ村上やん」と羨望のまなざしで見つめたという。 岡本が参加するように指示したわけではなく、学校、野球部を思っての自主的な行動だったそうだが、この日参加した中学生からも新たな“村上ファン”が生まれたことだろう。
期待も不安も超えていけ
1位指名を確認した瞬間、ドラフト前の記事で述べたように、私は深く安堵した。同時に、差し出がましいと思いつつも、「プレッシャーのある順位だな」とも感じた。何かと注目され、ときに必要以上の期待から批判にさらされるのもドライチの宿命である。村上がそれに押しつぶされないか……という思いが芽生えた。 だが、岡本からドラフト後の村上の様子を聞き、それは1年前にスピードガンを片手に感じた不安同様、杞憂に終わる予感がしている。 なにせ、岡本の描いた筋書きを大きく飛び越え、1位指名を勝ち取ったのだ。大勢からかけられる期待も、頭をかすめる不安も、その圧倒的な成長曲線で超えていくに違いない。
(「甲子園の風」井上幸太 = 文)
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