「監督、これ1位あるよ」記者はささやいた…ソフトバンクドラフト1位・村上泰斗はなぜ甲子園出場なしで“高校最強右腕”今朝丸裕喜の阪神2位を上回ったか
今年も多くのドラマが生まれたプロ野球ドラフト会議。神戸弘陵・村上泰斗は「上位指名候補」と呼ばれていたが、恩師・岡本博公監督は本人以上に緊張と不安に襲われていた――。以前から村上を取材し、2年時には取材していたスピードガンで「152キロ」を計測してちょっとした騒動を起こしてしまった経験を持つ記者が見た、涙の1位指名までの全内幕! <全2回の後編/前編を読む> 【写真】「新庄監督につられて笑ってますね」抽選を外した小久保監督、1位指名に涙ぐむ村上ほか、テレビに映らなかったドラフト当日の様子をすべて見る 指名の瞬間、村上は驚きの表情を浮かべた後、喜びと安堵感から感極まる。両隣に座る岡本と校長からは、背中をたたかれる。岡本は、背中の後、頭もポンとなでるように触れた。“育ての親”からの労いが見られたのは、会議の開始から約40分後のことだった。 ソフトバンクからの1位指名。これには“予兆”があった。10月初旬に神戸弘陵を訪れたとき、岡本はこう語っていたものだ。 「すごく評価していただいていて、『2位までにはかかる』とか『3位で取れたら相当ラッキーだよ』と言っていただいています。あと、この前、めずらしく福岡のメディアの方が来られたんですよ」
ベテラン記者が「これ1位あるよ」
ドラフト直前にも複数社から取材の申し出があったが、大半は在阪マスコミか雑誌社だった。その中で、ソフトバンクのお膝元である福岡のメディアからも問い合わせがあった。 取材当日に現れたベテラン記者が、岡本にささやく。 「監督、僕の経験からすると、これ1位あるよ」 長年の取材経験から察するソフトバンク陣営の熱量、シーズン順位が下位のチームから指名できる2巡目のウェーバー順を考慮すると、1位指名も十分あり得る……。そんな口ぶりだったという。 その予測通りの1位指名。岡本同様、「ドラフト前は不安が大きかった」という村上は指名の瞬間は涙を流しながらも、すぐに凛とした表情を取り戻し、報道陣からの質問に答える。 「プロで目指す投手像」を問われると、こう回答した。 「自分はストレートにこだわりがあって、ストレートにこだわりたいなと思っているので、プロに入った後に、藤川選手……藤川監督じゃないですけど、“火の玉ストレート”と称されるようなストレートを投げられるように頑張っていきたいと思います」 岡本は「ブレへんかったな」と思いながら、教え子の所信表明に耳を傾けた。 「聞かれるのは『指名された球団の印象』『憧れている選手と対戦したい選手』とかやで、と伝えてました。東は放っておくと何を話すかわからんかったので、7年前は調査書をもらった球団ごとに『ここに指名されたら、印象はこうで、憧れはこの人って言えよ! 』と、“一問一答集”を作ったんですけど(笑)、村上は本人に任せました。憧れの選手と聞かれたときはずっと藤川投手と言ってきて、突然変えるのも変なので、よかったんじゃないですかね」 ドラフト前に取材をしたときも、来季から阪神の監督を務める藤川球児への憧れを口にしていた。現役最盛期をリアルタイムで見ている年代ではないが、2006年のオールスターで繰り広げた、アレックス・カブレラ(当時西武)との伝説の力勝負は、動画サイトで繰り返し見たとキラキラした目で語ってくれた。 当日にとったポーズ写真を見返すと、藤川と同じく、人差し指と中指の間隔が狭い直球の握りで、ボールを持っている。 村上にとってのターニングポイントは、大きく分けて2つあると感じる。 一つは、知名度を急上昇させた、2年生夏前の152キロの計測。そして、もう一つが、3年生への進級直前に行われた報徳学園との練習試合だ。
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