本田宗一郎とイーロン・マスクに共通点があった? 稀代の経営者を支える「無知の知」とは何か
本田宗一郎の宇宙観
ドイツの詩人ゲーテは、 「天才とは努力する才能をいう。努力し続けられるのは、強い意志と、崇高な目標が宿っているからだ」 といった。本田宗一郎やイーロン・マスクはもちろん当てはまるし、イノベーターだけでなく、スポーツ選手、芸術家など、さまざまな分野で傑出した人物全てがそうだといえよう。 本田宗一郎の場合、ゲーテのいう努力する才能に、 「そもそも機械が好き」 であることと「無知の知」が加わったといっていいだろう。とはいえ、「無知の知」ほど実践が難しいものはない。 本田宗一郎の著書「得手に帆をあげて」(光文社)に、ミュンヘン科学博物館で宇宙の未知の部分を示した石の円盤を見た際、人類の既知の部分がいかにわずかであるかに、あらためて気付かされたとある。そのとき、 「モノは考えようだ。オレのためにこれだけの未知の世界が残されていると思えば、かえってファイトが湧くじゃないか」 と、負け惜しみではなく本当に実感したという。 「無知の知」は、自分への戒めとして使うだけでもかなりの謙虚さや修養を必要とする。さらに 「だから面白い」 「わからないからいい」 まで昇華させるには、イノベーターとなるための資質だけでなくプラスαの生まれつきの才能や性格が必要なのかもしれない。
灘真(テックライター)