女子サッカー過去最高額を牽引するWSL。長谷川、宮澤、山下、清家…市場価値高める日本人選手の現在地
強豪マンチェスター・シティで即戦力に
翌日はマンチェスター・シティの本拠地であるジョイ・スタジアムでアストン・ヴィラを観戦した。各国代表の主力を揃え、リーグでも圧倒的なポゼッションを誇るシティは今季、リーグと欧州女子チャンピオンズリーグ(WCL)の2大タイトルを目指す。3シーズン目を迎えた長谷川唯は守備的MFとして2年連続のリーグベストイレブンに選ばれるなど、今やシティの「顔」。その後を追うように、今季は清水梨紗、山下杏也加、藤野あおばの3人が加入した。 「自分が加入した年(2022年)からシティが補強に力を入れてメンバーが大きく入れ替わった中で、3年目の今シーズンは本当にいいチームが出来上がっていると思うので、楽しみにしてほしいです」 シーズン前に長谷川が話していた通り、的確な補強をしたチームは好スタートを切り、5節終了時点で暫定首位につけている。 清水はケガでリハビリ中だが、山下と藤野は早くもレギュラー争いに食い込んだ。プレシーズンの試合で好パフォーマンスを披露した山下はポジション争いでリードし、バルセロナをホームに迎えた10月10日のWCLでは2-0で欧州王者をシャットアウト。FWの藤野は激戦区のポジションで途中出場が続いているが、16日の女子WCLでは初ゴールを決め、堅実にアピールしている。 アストン・ヴィラ戦では、長谷川と山下が先発。歓声とブーイングが渦巻くピッチで、2人は確かな存在感を放っていた。ヴィラはプレシーズンで敗れ、「苦手意識はある」と山下が話していただけに簡単な相手ではなく、前半20分にサイドを破られて先制を許す。だが、焦ることなくボールを動かし、後半はシティが圧倒した。 長谷川は中盤で密着マークを受けていたが、表情や動きには常に余裕が漂っていた。 「そういう(密着マークされる)状況は練習から想定していたので、いつもと違う形でボールを回しました」 立ち位置でスペースをコントロールし、少ないタッチ数でボールを捌く。随所に持ち味のボール奪取を見せ、33分には最初の決定機に絡んだ。 山下も高い位置でビルドアップに参加し、プレッシャーの中でもワンタッチでパスをつなぐ積極的なプレーを披露。大舞台や逆境に強い山下は、すでにガレス・テイラー監督やチームメートの信頼を得たようだ。試合中、短い英単語で味方に指示する場面も見られた。 「最初は味方がボールを受けに来てくれるかどうかがわからなかったので怖い部分もあったんですけど、チームの後ろからのビルドアップのルールを覚えながら、みんなの特徴も掴めてきました」(山下) 後半、シティは62分からの8分間で逆転。ローレン・ヘンプのバイシクルシュートと負傷明けのジル・ルートのゴールに、3528人が入ったホームのジョイ・スタジアムの歓喜が炸裂した。83分に途中出場した藤野は3点目を目指したが、短い時間で見せ場を作ることはできず。観客が帰った後のスタジアムで黙々とランニングする背中に、静かな闘志の炎が燃えていた。