女子サッカー過去最高額を牽引するWSL。長谷川、宮澤、山下、清家…市場価値高める日本人選手の現在地
なでしこの両翼対決の行方は…
各スタジアムで観客数の更新が続いているWSLだが、土曜の日中開催となったこの試合は、同スタジアムのWSL最多記録となる8369人を記録した。気温は涼しいが、スタンドはかなりの熱気だ。 ブライトンは昨年末に、国内で最初の女子専用スタジアム計画を提出。今期、トップ4入りを目指して12人もの新戦力を補強。その一角を担う清家は、開幕戦でハットトリックと最高のデビューを飾った。だがその後はベンチを温める時間が増え、この試合はベンチスタートとなった。 一方のユナイテッドは今季、新たにクラブの株主となったINEOSがフットボール部門を管理することになり、女子チームも再編期を迎えている。オフにはキャプテンのケイティ・ゼレムやベテランFWのニキータ・パリス、イングランド女子代表の守護神メアリー・アープスら主力がチームを離れ、転機のシーズンを迎えている。宮澤は昨季、トップ下やボランチを任されることも多かったが、今季は本職であるサイドで出場機会を得ている。 「昨年は、やっと自分のプレーを理解してもらえたところでケガをしました。今シーズンはメンバーが変わって、チームとして一から積み上げている部分もある中で、自分にももう一度チャンスがきているので、掴み取らなければいけないと思っています」(宮澤) 縦に速く、個で勝負するスタイルが染みついていたチームの中で、チームメートには練習の中でこう訴えてきたという。 「もっと相手を動かして崩したい。パスはスペースに蹴るのではなく、足元に出してほしい」 地道な積み上げの成果は、形になってきているようだ。宮澤は4-2-3-1の左サイドハーフで先発し、前半3分には左足でファーストシュートを記録。テンポの良いパスワークの潤滑油になり、13分には先制弾の起点となった。 だが、後半はブライトンが反撃。52分に古巣対決となったニキータ・パリスが鉄壁のユナイテッドから今季初得点を奪い、勝ち点1を分け合う形に。清家はベンチで試合を見守ることになり、試合後の表情は硬かった。最終ラインからのビルドアップにこだわりを持つダリオ・ヴィドシッチ新監督がサイドの選手に求めるのは、「ワイドに張る」「ボールをキープして時間を作る」というタスク。これまで清家が担ってきた縦への推進力は活かしにくく、すり合わせに苦労している面もあるようだ。 とはいえ、3度の前十字靭帯のケガから復帰して海外挑戦のチャンスを掴んだ苦労人は、逆境を更なる成長への通過点と捉えているようだった。 「まだ自分が(交代の)ファーストチョイスではないんだな、と思いました。ただ、海外挑戦は甘くないと覚悟していたので、こういうこともあるだろうなと。サイドはパワーがある選手が起用されているので、自分もそういうプレーをもっと磨いてどんどんアピールしていきます」 宮澤と清家。なでしこのアタッカーコンビは、それぞれの場所で異なるタスクと向き合い、新たなシーズンへと確かな一歩を踏み出していた。