「洋上風力」世界最大級プレイヤーに名乗り…JERAが英BPと連携、背景に事業環境の難しさ
JERAは英BPとの洋上風力発電事業の統合により、同分野で世界最大級のプレーヤーとして名乗りを上げた。子会社を通じ、2025年9月末をめどにBPと50対50の出資比率で新会社「JERA Nex bp」を設立する。開発中を含む総持ち分容量は世界4位の約1300万キロワット規模となる。コスト上昇で事業環境が厳しくなる中、規模拡大で競争力を高める狙いだ。(梶原洵子) 【写真】JERAの洋上風力発電プロジェクト 「簡単ではない事業環境だが、ワクワクしている」。9日、オンラインで会見したJERAの矢島聡常務執行役員は事業統合の期待をこう語った。東京電力ホールディングス(HD)と中部電力から引き継いだ火力発電が主体の同社にとって、将来の再生可能エネルギーの主力電源となる洋上風力で世界最大級の仲間入りを果たすのは大きな飛躍だ。 転機は23年のベルギー洋上風力大手・パークウィンド(PW)買収だった。実績の豊富なPWの買収で、海外企業から“組める相手”と目されるようになった。5月に成長戦略としてグローバルプレーヤーと連携する方針を打ち出すと数社から問い合わせがあり、その1社がBPだった。「わらしべ長者のようなもの。してやったりだ」と矢島常務執行役員は話す。 両社は開発資金として30年末までに最大58億ドル(約8700億円)を新会社に出資し、資金調達も組み合わせて日本、欧州北西部、豪州を中心に開発計画を推進する。30年までに1300万キロワット全ての運転開始は難しいと見ており、優先順位を付けて最大限の稼働を目指す。有望な新規案件も検討する。 事業統合の背景にあるのは、やはり洋上風力を取り巻く事業環境の厳しさだ。設備などのコスト上昇で採算性は悪化し、欧州では案件が巨大化して1社での完遂が難しくなっている。だが、「世界のエネ問題へのソリューション提供に向け、歯を食いしばってやるのが当社の役割」(矢島常務執行役員)と考え、BPとの連携で問題の突破を図る。規模拡大により調達時の交渉力や存在感を高め、競争力を向上させる。 こうした事情はBPも同じだ。BPの計画はいずれも運転を開始していないが、化石資源開発を通じて海洋工事関連技術に強みを持っており、「洋上風力発電事業でも生きる」(同)と期待する。 また、「新会社が軌道に乗れば『組みたい』という申し出も出てくると思う。何としても成功させたい」(同)とも。洋上風力の悩みは世界共通。BPとの連携で成長の道筋を付けられれば、次の展望も描けそうだ。