ゲイと公表した後も怖かった――與真司郎が得た「自分らしく生きる」実感 #性のギモン
公表後も揺れ動いた心 「受け入れられている」という安心感に希望が見えた
ところが、その後も與さんの内面は揺れ動く。 「カミングアウトしたあと、ロサンゼルスで過ごしていたんですけど、メンタルの調子がよくなかったんです。本当によかったのかなとか、今まで応援してくれたファンのみんなの気持ちが晴れないんじゃないかなとか、いろんなことを考えてしまって」 前向きになれたのは、ファンとの再会がきっかけだった。AAAとして苦楽を共にしたメンバーの支えも大きかった。 「カミングアウトから3カ月後に日本に帰ってきて、メディアの取材を受けたんです。最初の何回かはものすごく怖かった。全然言葉も出てこないし、何を話せばいいかもわからなくて。でもみなさんすごくオープンに聞いてくれて、あ、大丈夫なんだって、まず思いました。 そのあと、12月に大阪と東京でトークショーをやって、大みそかに(AAAのメンバーの)宇野実彩子のライブにゲストとして出させてもらったんです。その3つが大きかった気がします。ファンのみんなが、自分がゲイであるという話を自然に聞いてくれた。実彩子のライブの時も、実彩子のファンには異性愛の男の人も多いと思うので、(MCで)『ごめんな、実彩子を(恋愛的に)そういう目では見れへんねん』って言ったら、ワーッと笑いで沸いたりとか。シリアスな捉え方ではなく、ふつうのこととして受け止めてくれるんだっていう安心感を覚えた時に、ちょっと希望が見えた。自分らしく生きることの大切さと素晴らしさを、本当に、理解できた気がします」
芸能界に提言 もうちょっとオープンになったら
日本の芸能人にLGBTQ+の人がいないわけではない。しかし正式にカミングアウトしている人は多くない。とりわけポップアイドルは暗黙のうちに異性愛を前提としている。與さんも「好きな女性のタイプは?」とか「理想の女性とのデートは?」といった質問に答えてきた。 「どこかでうそをついてしまっている自分がいるという意識はありました。だから(隠している期間が)長ければ長いだけ、言いづらいんですよね。僕もそこですごく葛藤していて。だから、カミングアウトした時、ファンの人から『真ちゃん、確かに今までそういう(ルックスや異性として好きというような)部分も見てたけど、それだけじゃないから。あなたの音楽や生き方が好きだから応援するのであって、ゲイだからとか関係ないから』と言ってもらった時に、逆に自分のほうがファンのみんなをジャッジしちゃってたのかなって思ったんです。そこはすごく反省しました。自分の中で。 異性のタイプを聞かれるのはしょうがないというか、メディアが悪いとは思っていなくて。自分が好きな人の好みのタイプを聞きたいというのは、当たり前の感情だと思う。聞いちゃいけないのではなくて、最初から、僕はゲイですよ、私はレズビアンですよって言える環境になっていくことが、大事なんだと思います」 日本の芸能界ではまだまだオープンに言えない環境がある。 「欧米だと、エルトン・ジョンやリッキー・マーティン、エレン(・デジェネレス)とか、カミングアウトしたセレブの歴史がある。アジアはまだ多くないから、オープンにする人がもっと出てきてもいいんじゃない?と思うけど、リスクも大きい。あと、音楽に対する応援の仕方も関係するかもしれません。日本では、アーティストを恋愛対象として見ている方も一定数いると思います。それが悪いとは言いたくないんです。アジアにはアイドルカルチャーというものがあって、それで満たされる人もいる。ただ、日本やアジアが、もう少しいろいろな事をオープンに話せるようになったら、みんながもう少し楽に生きられるんじゃないかなって。 僕のいまのファンには、『真ちゃん、早く彼氏紹介してよ』みたいな感じのノリの方もいるんですよ(笑)。日本の芸能界では、恋愛を隠す傾向があるけど、僕だって恋愛しますよ。させてくださいよって感じです(笑)」