【詳報】闇バイト事件裁判 被告が繰り返した「軽率さ」【#司法記者の傍聴メモ】
■高収入に疑問を感じても…なぜ闇バイトに?楽して稼げる仕事を選ぶ「軽率さ」と「浅はかさ」
2人の被告に共通する動機は「お金が必要だった」という点だ。とは言え、犯罪に直結する闇バイトに手を染めることにためらいはなかったのだろうか。 饗庭被告が聞かされていたのは、ATMを操作する男性を見張る仕事で、報酬は10万~20万円だったという。 検察官「報酬が10万~20万円ももらえるのを怪しいと思わなかった?」饗庭被告「思いましたが、軽率な行動をしてしまった」 弁護士「闇バイトに手を挙げたのはなぜですか」饗庭被告「お金が必要だったからということと、後のことを考えられなかったから」弁護士「後のことを考えられないくらいにお金に困っていた?」饗庭被告「・・・それほどではないです」 饗庭被告は、楽をして金を稼ごうとしたと認め、「私の軽率な考えでやってしまったと思います」と当時を振り返った。 その後も何度も「軽率」という言葉を使い、後悔を口にした饗庭被告。 一方、佐藤被告は闇バイトの背景に犯罪組織があると分かったうえで、犯行に及んでいたという。 佐藤被告「簡単には抜けられなくなるというのは想像していました」 検察官「振り返ってどういったことが原因だったと思う?」佐藤被告「浅はかな発想で、簡単にお金を得られると思って、闇バイトに応募して連絡してしまったことが、そもそもの間違いだった」 抜けられなくなることが想像できていながらも、楽に金を稼ごうと闇バイトに応募していたのだった。
■言い渡されたのは執行猶予付きの有罪判決 そのとき被告らの様子は
2人は被告人質問の中で、それぞれ今後どうしていくかを語った。 饗庭被告「しっかりとした普通の仕事につくことで、こういった世界から抜けられると思う」「調理師の資格を持っているので、そのような仕事につきたい」 佐藤被告「いまは決まっていないが以前働いていたところで働きたい」「(今後お金に)困らないように計画的にお金を使っていきたい」 そして迎えた12月23日の判決で、2人に言い渡された判決は懲役3年、執行猶予5年の有罪判決。 判決の理由について、裁判長は「役割を分担しながら行った組織的、計画的な犯行である」とした上で今回の犯行が、「犯罪組織が、闇バイトに手を染めた者に制裁を加えるなどして実行役を確保し、犯罪組織の維持を図る側面も有している」と指摘。 その上で「警察に相談するなど、ほかの合法的な手段をとらずに違法行為に及んだことに酌量すべき事情は見当たらない。被告人らは、強く非難されなければならず、その刑事責任は軽視できない」と指摘した。 2人は判決の理由が読み上げられるとき、裁判長の言葉に静かに耳を傾けていた。 ◇ ◇ ◇ 【司法記者の傍聴メモ】法廷で語られる当事者の悲しみや怒り、そして後悔……。傍聴席で書き留めた取材ノートの言葉から裁判の背景にある社会の「いま」を見つめ、よりよい未来への「きっかけ」になる、事件の教訓を伝えます。