【詳報】闇バイト事件裁判 被告が繰り返した「軽率さ」【#司法記者の傍聴メモ】
「私の軽率な考えでやってしまったと思います」 2024年8月、埼玉県さいたま市で発生した逮捕監禁・恐喝未遂事件。闇バイトに応募し、指示役から言われるがままに犯行に加担した2人の被告。裁判で明らかになったのは、2人のあまりに「軽率」で「浅はか」な行動だった。 (社会部さいたま支局 浅賀慧祐)
■闇バイトに応募 後戻りできない状況に…
関東で相次いでいる、闇バイトによる事件。ことし8月、さいたま市で起きた逮捕監禁・恐喝未遂事件の裁判が12月12日に行われた。 饗庭元被告(21)と佐藤拳太被告(25)は仲間と共謀し、さいたま市の公園の仮設トイレで被害者Aさん(当時34歳 男性)に対し腹を殴るなどの暴行を加えたうえ車に監禁し、現金を脅し取ろうとした罪に問われていた。 実は被害者のAさんも闇バイトの応募者で、指示役から報酬などの受け渡しという名目で呼び出され、事件に巻き込まれていた。事件の背景には、闇バイトのグループ内でのトラブルがあったのだ。 初公判で起訴内容を認めた2人。犯罪に加担するかもしれないと思っていても「軽率」に、あるいは「浅はか」に闇バイトに応募した結果、後戻りができない状況に追い込まれていた。
■「やめれば同じ目にあうかもしれない」”高圧的で乱暴な”指示役からの指示
実行役の1人、佐藤被告がSNSで「運び」と検索して闇バイトに応募したのは事件から2~3日くらい前のことだった。もう一人の実行役・饗庭被告も「パチンコの打ち子」などとバイトを探していたが、結果的に闇バイトに応募した。 事件当日、佐藤被告はまず、指示役「アカニシ」からの指示で都内のスーパーマーケットで饗庭被告を車に乗せる。この時点での佐藤被告の仕事は、まだ「運び」だったというが、その後、指示役が「アカニシ」から「ゴッサム」に変わった。 すると、「ゴッサム」は2人に「債権回収役として、詐欺の報酬を受け渡すと言って呼び出している人を車に乗せてほしい」などと指示。車から逃げないよう、抵抗したら暴行を加えていいとも伝えた。その理由について「ゴッサム」は、「その人がルールを破ったからだ」と説明したという。 公園に到着すると、2人は仮設トイレにいた被害者Aさんを引きずり出し、腹を殴るなどの暴行を加えて車に乗せた。そして「ゴッサム」は、スピーカー状態にしたスマートフォンの通話で、Aさんがルールを破ったとして叱責した。 「よその案件やってましたね」「この責任どう取ってくれるんですか」「きょう生きて帰れないかもしれませんよ」 Aさんが釈明をすると、2人に「殴れ」などと指示した。 2人は車を埼玉・秩父市に走らせたが、その途中、Aさんの口座に現金があることを知り、その金を引き出せるカードを取りに行くためAさんの自宅近くまで戻ることに。自宅に帰ったAさんが母親に被害を訴えたため、母親が110番通報し、現金を脅しとる計画は未遂に終わった。 なぜ2人は、指示役から言われるがまま犯行を続けたのか。 佐藤被告(被告人質問より)「(指示役ゴッサムについて)今回の仕事で初めて知り合ったが、高圧的で乱暴な印象がある」 そんな指示役グループに対し、饗庭被告の場合はすでに氏名や住所などの個人情報を送ってしまっていたという。 饗庭被告(被告人質問より)「住所や氏名などを指示役に渡していて、自分も同じ目にあうのではないかと思い、抜け出すことはできませんでした」 佐藤被告「やめたら同じ事を自分がされるかもしれないと思った」 こうした指示役との関係について、自身も闇バイトに応募していた被害者のAさんも「指示役に逆らえない立場だったのかなという思いもあり共感できる部分もある」などと話していた。