「番組が終わったのは住吉さんのせい」傷つきながら試行錯誤して行き着いた、50代の「自分働き方改革」【住吉美紀】
また、しばらくして気づいたのは、周りが私に抱いているイメージと、自分で思う自分というイメージに、かなり乖離があるということ。例えば「NHK出身だからニュース番組を担当するのがいい」と当然のように思われていたり、「(堅い人なのに)ポップス音楽がそんなに好きだなんて意外です」と言われたり、驚くことしばしばだった。 考えてみればNHK内では、私が新人の頃からどんな仕事をしてきたか、どんな実績があるか、どういうキャラなのかを大体の同僚や上司が知ってくれていた。しかし、当たり前のことだが、一旦組織を離れると、誰も私の仕事史を知らないのだ。私にどんな実績や能力があるのかも、これなら任せられるという信頼も、人柄やキャラ設定も、すべてゼロからのスタート。いや、余計なイメージがある分、もしかしたら、マイナスからのスタートだったかもしれない。 そして、過去を知らずに、初期の現場でご一緒した方々には、新しい世界に適応できていない私はただのダメな人に映っただろう。なぜこんなに能力の低い人がフリーになったのだろう、と。 とっても寂しい気持ちになることがあった。仕事で落ち込んだり悩んだりしても、相談する同僚も先輩もおらず、アドバイスをくれるメンターもなく、ネコしかいない家で、ひとり途方に暮れる日が少なくなかった。 忘れられないほど、傷ついたこともある。私が司会だったとある番組が、短命で終了した(つまり打ち切りになった)ときの打ち上げ。私は疲れですぐに酔いが回り、一度眠りに落ちてしまった。どのくらい時間が経っただろう、意識が戻ってきたら、みんなの話す声が聞こえた。
住吉 美紀