給付金・補助金か減税か、衆院選2024の与野党公約を総まとめ
2024年衆院選では、多くの党が経済政策の公約として賃上げ、所得向上を掲げている。2022年参院選では、ウクライナ危機直後の物価上昇に対し、各党はどちらかといえば短期的な対策を掲げていたが、物価上昇が定着する中で、物価上昇を上回る賃上げの実現を重視する動きが広がっている。 【著者作成図表】2022年参院選と比較した2024年衆院選公約の特徴。かなりの部分が網羅されている。 ただ、実質賃金のプラス化を図るための経路、経済政策の考え方には各党で違いがある。 第50回衆議院議員総選挙が10月15日に公示された。10月27日に投開票となる。主要6政党は「政権公約」や「政策パンプレット」「重点政策」といった名称で、衆院選の公約を公表済だ。本稿では、各党公約の特徴や違いを整理する。(宮前 耕也:SMBC日興証券 日本担当シニアエコノミスト) ■ 2024年衆院選公約の特徴 まず、全体的な特徴を、2022年参院選と比較してみよう。 第1に、多くの党が政治改革を最優先課題に位置づけている。2022年参院選では各党が掲げる最優先課題は異なっていたが、昨年末の自民党における政治資金問題を受け、2024年衆院選では各党が政治改革を重視、あるいは争点に位置づけている。 第2に、経済政策について多くの党が賃上げ、所得向上を重視している。2022年参院選では、ウクライナ危機直後の原油価格や小麦価格の高騰を背景とした物価上昇に直面し、各党はガソリン補助金継続やガソリン減税、時限的な消費減税など、どちらかといえば短期的な対策を掲げていた。だが、物価上昇が定着する中で、物価上昇を上回る賃上げの実現を重視する動きが広がっている。 以下、与野党の公約について、物価高対策を軸として経済政策を比較する。
■ 実質賃金のプラス化は共通するが経路に大きな違い 主要6政党いずれも、物価高対策として、物価上昇を上回る賃上げの実現、すなわち実質賃金の前年比プラスを目指している点で共通する。ただ、実質賃金のプラス化を図るための経路、経済政策の考え方には違いがある。 自民、公明の与党両党、ならびに日本維新の会は、いずれも成長戦略を重視している。設備投資や人への投資を通じて成長力や生産性を向上させ、持続的な実質賃金のプラス化を目指すという考え方である。 5月25日付けの拙稿「【実質賃金・24カ月連続減!】上場企業の純利益は最高益なのに実質賃金の減少は過去最長を更新、なぜ増えないのか?」でも解説の通り、持続的な実質賃金増加のためには、時間当たり労働生産性の上昇が必要になる。 国民民主党も設備投資や人への投資を掲げているが、さらに積極財政等と金融緩和による「高圧経済」の必要性を強調している点が特徴的だ。 対して、立憲民主党は物価安定目標を「2%」から「0%超」に変更した上で、「実質賃金上昇」を政府・日銀の共同目標に掲げる方針を示している。 立憲民主党は2022年の参院選でも、2%物価安定目標や異次元緩和を円安進行の背景と位置づけた上で、物価高騰対策として金融政策の見直しを掲げていたが、今回は物価安定目標の変更に踏み込んでいる。 なお、「0%超」が具体的にどの程度の水準、レンジを指すのかは不明だが、数値を「2%」から引き下げている点を踏まえれば、物価上昇を抑えることを主眼に置いていよう。 人手不足が今後も継続、そして深刻化しやすい中、仮に物価目標を「0%超」とするならば、大幅な金融引き締め、そして急速な円高を迫られる可能性がある。 日本共産党は、「大企業の内部留保に時限的に課税して10兆円規模の財源を確保」した上で、中小企業の賃上げを直接支援する方針を掲げている。日本共産党はかねてより、「大企業・大金持ち優遇」を転換、分配策を通じた格差是正を主張するケースが多いが、今回も同様だ。