美輪明宏「朝ドラ『花子とアン』で〈ごきげんよう〉が注目されて。語源は室町時代に女官が使っていた御所言葉」
歌手、俳優の美輪明宏さんがみなさんの心を照らす、とっておきのメッセージと書をお贈りする『婦人公論』に好評連載中「美輪明宏のごきげんレッスン」。 2月号の書は「ごきげんよう」です。 【美輪さんの書】優雅な美輪さんの文字「ごきげんよう」 * * * * * * * ◆麗しい挨拶言葉を口にしてみる 今回は、私がふだんから使っている麗(うるわ)しい日本語をご紹介しましょう。 それは「ごきげんよう」。一時代前、上品な女性は「ごきげんよう」と挨拶したものです。 2014年、NHK連続テレビ小説『花子とアン』で、ナレーターをつとめました。その際、番組の締めくくりに言う「ごきげんよう」という挨拶言葉が注目されるように。その年の流行語大賞にノミネートされました。 ナレーターとしてお声がけいただいたきっかけは、なんでもテレビ局の方と脚本家の中園ミホさんが、「ごきげんよう」を使い慣れている方がほかにいない、と思われたからとか。 ヒロインのモデルで『赤毛のアン』を翻訳された村岡花子さんは、NHKの子ども向けラジオ番組に出るときに、必ず「ごきげんよう、さようなら」で締めくくっていたそうです。
◆響きも美しく、うれしい気分に 「ごきげんよう」は「ごきげんようございます」「ごきげんよくお過ごしくださいませ」などが短くなったもの。室町時代に宮中で女官たちが使っていた御所言葉が語源とも言われています。明治時代には山の手言葉として、日常生活や女学校での挨拶で使われていました。 人が訪ねてきたときなど、「ごきげんよう」と言われると、自然と自分がきげんよく過ごしているような気分になります。また別れる際に「では、お気をつけて。ごきげんよう」と言われると、なんとなくいい気分に。響きも美しく、口に出すほうも聞いたほうもうれしい気分になるのですから、なくしてはいけない、麗しい日本語だと思います。 最初はちょっと照れくさいかもしれませんが、まずはお友達と「令夫人ごっこ」のつもりで口にしてみたらどうでしょう。そのうち慣れて身につきますよ。 というわけで……、それではみなさん、ごきげんよう。 ●今月の書「ごきげんよう」 (構成=篠藤ゆり、撮影=御堂義乘)
美輪明宏