ハリス氏は民主党副大統領候補にミネソタ州ワルツ知事を指名:ラストベルトの白人労働者層の取り込みを狙う
本命のシャピロ氏でなくワルツ氏を指名
米民主党の大統領候補として正式に指名されたハリス副大統領は6日、次期副大統領候補に中西部ミネソタ州のティム・ワルツ知事を指名した。選考の最終段階では、ペンシルベニア州知事のジョシュ・シャピロ氏、アリゾナ州選出のマーク・ケリー上院議員とワルツ氏の3人にまで指名候補は絞られていた、とされる。 ワルツ知事は、元高校教師でアメリカンフットボールのコーチも務めたこともある庶民派だ。ミネソタ州は、激戦地であるラストベルト(錆びた地帯)にあることから、ラストベルトの有権者を取り込む狙いがこの指名にはあるだろう。 ただし、ラストベルトの票を意識するのであれば、ペンシルベニア州知事のシャピロ氏を指名した方が、有効だったとも言える。ペンシルベニア州はラストベルトの中でも特に重要な「青い壁」3州(ペンシルバニア州、ミシガン州、ウィスコンシン州)の一つであり、かつ、その中でハリス氏が最も苦戦している州だ。 シャピロ氏を指名すれば、同州での選挙に有利に働いた可能性がある。さらにシャピロ氏はユダヤ系であり、米国の人口の2%程度を占め、影響力の大きいユダヤ系の支持を得ることの助けになったはずだ。実際、シャピロ氏が副大統領候補の指名に最も近い、との指摘も事前には少なくなかった。
ユダヤ系のシャピロ氏に懸念か
ハリス氏が最終的にはシャピロ氏ではなくワルツ氏を選んだ理由は明確ではないが、中東問題が関係している可能性がある。シャピロ氏は、大学キャンパスで行われる親パレスチナ抗議デモを辛らつに批判したことや、イスラエルからの投資撤退を行った教育機関を罰する案を支持していることなどを問題視する声がある。 ガザ地区での紛争で、バイデン政権のイスラエル寄りの姿勢を続けることを批判する意見が若者の間で強まっているが、シャピロ氏を副大統領候補に指名すれば、そうした傾向を助長してしまうことを、ハリス氏は懸念したのかもしれない。
ハリス氏とワルツ氏の組み合わせはリベラル色が強すぎるのが弱点か
黒人・アジア系の女性であるハリス氏は、白人男性のワルツ氏を副大統領候補に指名し、バランスをとった。しかし、両者ともにリベラル色(左派色)が強いとされ、政策面でのバランスは意識されていない。これは、共和党のトランプ氏が、78歳という自身の高齢を意識し、バランスをとって39歳のバンス氏を副大統領候補に選んだ一方、政策面ではともに右派色が強く、バランスがとられていないところと似ている。 ワルツ氏の指名を受けて、トランプ氏は早速批判を始めている。トランプ氏はハリス氏とワルツ氏について、「彼らは米国がすぐに、いや、もっと早く共産主義になることを望むはず」とした。他方、ワルツ氏については「あまりにも進歩的な人物であり衝撃的」とし「私は本当にうれしい」と述べた。つまり、ワルツ氏の指名は自身の大統領選に有利に働くという意味だ。 ハリス氏、ワルツ氏がともにリベラル色(左派色)が強いことは、左派の支持を固めやすい一方、選挙で勝敗の鍵を握る無党派層、中道派層の票を取り込みにくい、という弱点となる可能性もあるだろう。