「トランプ関税」中国に大打撃、経済成長率2%低下の試算 日本が次の標的になる恐れ ノーベル経済学賞受賞者も警鐘
【日本の解き方】 ドナルド・トランプ次期米大統領が、就任後に中国からのほぼ全ての輸入品に10%の追加関税をかけると表明した。メキシコやカナダにも関税を課す命令を出すとしている。中国をはじめとする各国の経済にどんな打撃があるだろうか。そして、日本にも影響は出るだろうか。 【グラフでわかる】中国の対外黒字、実は全面的に米国の対中貿易赤字が支えに 追加関税措置についてトランプ氏は、医療用麻薬「フェンタニル」などが中国から流入しているためとしている。中国製の原料による麻薬の大部分がメキシコ経由で米国に流入しているとして、この流れが止まるまで、中国からの全ての輸入品に対して、既存の追加関税に加えてさらに10%の上乗せ関税を課すというものだ。 トランプ氏はさらに、犯罪と麻薬を米国に持ち込んでいるとして、メキシコとカナダに対し、フェンタニルなどの麻薬と違法な入国者が止まるまで関税を課すとした。 今回の措置は、表向き麻薬の流入を理由としているが、実際のところ2023年の輸入額全体の上位3カ国(1位メキシコ、2位中国、3位カナダ)をターゲットにしたものと考えられる。となると、4位ドイツ、5位日本、6位韓国などが次のターゲットとなってもおかしくない。 こうしたトランプ政権の関税政策については、すでに6月にジョセフ・E・スティグリッツ氏らのノーベル賞経済学賞受賞者16人が公開書簡でその悪影響に警鐘を鳴らしている。 それに加えて、同じくノーベル経済学賞受賞者のポール・クルーグマン氏やサイモン・ジョンソン氏も、関税引き上げは中低所得者層の大きな負担になるばかりか、むしろ米国製造業に損失も出ると酷評する。関税は、国産品に対する消費税と同様に輸入品に対する消費税とも考えられるからだ。もちろん、関税をかけられる外国にとっても迷惑である。中国は、トランプ関税によって経済成長率が2%程度低下するという試算もある。 もっとも、トランプ氏は「タリフマン(関税男)」として前々から有名で、大統領選で民意を得たのでどんなに批判があっても平気だろう。関税の国内的な影響を打ち消す減税策や規制緩和策などは議会の承認が必要なので実行に時間がかかる。それまでトランプ氏は大統領権限で実施できる追加関税や移民規制の強化を先行させるだろう。 中国が対抗策に出た場合、トランプ氏は関税男のメンツにかけて、さらなる対抗策を打ち出すのではないか。