子どものいない兄が「死亡後に1000万円をどこかの団体に寄附したい」と言います。実現した場合、税金はどうなるのでしょうか?
自分が亡くなった後に、「地域の発展に貢献したい」「子どもたちの教育に役立てたい」などと、社会貢献を目的とした財産の寄付を希望する方もいるでしょう。本記事では、寄付に関する税金の仕組みや寄付金にかかる税金の種類、寄付金控除の基本や寄付先の選び方について解説します。
遺贈寄付とは
自分が亡くなった後、財産を国や地方公共団体、特定の公益法人、認定NPO法人、あるいは特定の個人に寄付することを「遺贈寄付」といいます。遺贈寄付は、将来の学校教育への支援や地域社会への恩返しなどができる社会貢献の手段として注目されています。 団体などに提供するという意味では、一般的な寄付と同じです。しかし、遺贈寄付の場合、自分の遺産を利用して多額の寄付をすることが可能になります。
遺言による寄付は税負担がない
遺贈寄付には、「遺言による寄付」「相続財産による寄付」「生命保険・信託による寄付」などの種類がありますが、本記事では「遺言による寄付」と「相続財産による寄付」について説明していきます。 まず、遺言による寄付の場合はどの団体にいくら寄付するかを遺言書に記載しておくことで、相続発生後に相続人や遺言執行者によって寄付が行われます。 遺言により国や地方公共団体などへ寄付する場合、相続人が準確定申告をすることで所得税の寄付金控除が適用されます。準確定申告とは、遺言者が死亡した日までに確定した所得金額および税額について相続人が申告、納税することです。 寄付先が法人であれば、原則として相続税の対象になりません。相続税は個人が受け取った財産に対して課せられるため、法人が寄付という形で受け取った財産は対象外となるのです。 ただし、自身や親族が経営する会社に寄付する場合には、会社に受贈益が発生して原則法人税が課税されます。 また、遺言書に財産の寄付に関する記載があっても、受遺者が遺贈を放棄した場合は相続人が相続することになり、寄付する予定の財産も相続税の対象となってしまいます。 遺言による寄付をしたい場合は、手続きをスムーズに進められなかったり、寄付を断られたりする恐れがあるため、寄付先の団体に自分の意思を伝えておきましょう。