「腰痛」を我慢してはいけない理由はご存じですか? 放置のリスクや受診の目安も医師が解説!
腰痛の治療法
編集部: 腰痛にはどんな治療法がありますか? 平井先生: 例えば筋膜性腰痛の場合、コルセットや内服薬による治療で改善を目指すことができます。それでも改善しなければ、エコーを見ながら炎症が起こっている筋膜に直接注射をする「筋膜リリース」で症状が劇的に改善する患者さんもいます。 編集部: 椎間板性腰痛についてはいかがでしょうか? 平井先生: 筋膜性腰痛と同様の治療法に加え、体幹の筋力を鍛えることで痛みが改善することも多いですね。改善が見込めない場合は、自費診療になりますが再生医療を検討することもあります。また、手術をすることもありますが、まだ腰椎に対しての人工椎間板はないので、かなり身体の負担の大きい手術方法となってしまいます。 編集部: 腰痛に対して、様々な治療法があるのですね。 平井先生: そうですね。基本的には、患者さんの負担の小さい治療法から始めていくので、まずは薬やリハビリなどをおこないます。改善しない場合には、ブロック注射や手術などが検討されることもあります。また、3カ月以上経過する腰痛に関しては、脳が痛みを感じやすくなってしまっていることも考えられるため、必要に応じて麻薬性鎮痛剤によるアプローチも検討します。
腰痛は放置しても問題ない?
編集部: 「腰痛は病気や怪我ではないから病院に行っても仕方がない」と思ってしまいます。 平井先生: たしかに、そう考える人も多いと思います。しかし、病院などの大きな医療機関では設備が充実しているため、より詳細な腰痛の原因を精査することが可能です。一方で、整形外科の診療所やクリニックを受診すると、腰痛の原因がはっきりわかることに加え、自分の背骨の特徴などについても知ることができます。一口に腰痛と言っても様々な病態があり、治療法も多岐にわたるため、まずは腰痛に対して高い専門性を持つ医師に相談して、自分の腰痛の原因が何であるかを知り、安心することも大切です。 編集部: やはり、我慢せずに医療機関を受診した方がいいのですね。 平井先生: そのとおりです。背骨のバランスや特徴はレントゲンで知ることができますし、骨折や脊椎の形態的な異常を確認することもできます。原因や背骨の特徴が分かれば、その患者さんに合ったリハビリやトレーニング方法の提案が可能です。特に、理学療法士が在籍している医療機関が、腰痛で困っている人に適しているのではないかと考えます。また、脊椎疾患は診断が難しく専門性が高いので、今まで漫然と湿布や痛み止めを処方されていた人も、脊椎の専門医の診察を受けると同じレントゲンやMRIの画像でも、新たな診断や治療法の提案をしてくれることがあります。 編集部: 腰痛だからといって油断できないのですね。 平井先生: そうですね。頻度は非常に稀ですが、「大動脈解離」や「尿路結石」など、腰椎以外の内臓に原因があって腰に痛みを感じていることもあります。また、がんが脊椎に転移して骨が破壊されていることによる腰痛(転移性脊椎腫瘍)や、椎間板や脊椎に細菌が感染して骨が破壊されてしまう腰痛(化膿性脊椎炎)の場合もあります。このような腰痛は早期に対応する必要があるため、「腰痛だけでなく発熱もある」「体重が減少してきた」などの症状があれば、早急に受診しましょう。 編集部: 最後に、読者へのメッセージをお願いします。 平井先生: 「腰痛くらいで受診してもいいのか」と、病院に行くことを躊躇ってしまう人もいらっしゃるかもしれません。しかし、腰痛は原因を知って診断がつくことで、治療が可能な病態です。病院で検査をしてもらうのは「危険な病気による痛みではない」と確認する意味もあるので、我慢せずに医療機関で原因を明らかにしてもらいましょう。特に腰痛をはじめとする脊椎の病気は専門性が高いため、脊椎専門医に相談することで、今まで見つからなかった病気が判明したり、自身でできる対処法が知れたりします。腰痛で医療機関を受診する際は大きな病院にこだわらず、まずは専門医が在籍している地域の医療機関などで気軽に相談してみてください。 [この記事は、Medical DOC医療アドバイザーにより医療情報の信憑性について確認後に公開しております]