紫式部の弟・惟規の死…SNSで広がる「ロス」の声 紫式部日記につづられた「お前が男だったら」の言葉
一族の命運をかけた政争 ドラマでも「闇落ち」
たらればさん:これまで出世欲もないように描かれていた藤原道長(柄本佑さん)ですが、このあたりにきて、ちゃんと(ちゃんと?)闇落ちしてきましたね。 水野:確かに、感じました。周囲に「自分の目の黒いうちに孫が帝になるところが見たい」と言うとか…。 たらればさん:ドラマではすでに道長が揺るぎない権力を持っているように思ってしまいますが、史実ではこの頃(西暦1011年頃)の道長の権力基盤は、それほど万全でもないんですよ。 今の一条天皇(塩野瑛久さん)は、弟の道長をかわいがってくれた姉の詮子(せんし)さまの子どもですが、この時点で後ろ盾だった詮子さまは亡くなっていますし、もちろん父・兼家ももういません。 今回(第39回「とだえぬ絆」)で伊周(三浦翔平さん)が満37歳で亡くなりましたが、もしこの時点で伊周が健康で、一条天皇や第一皇子である敦康親王、周囲の公卿たちとの関係がうまくいっていれば、権力はどう転ぶかは分からなかったわけです。 水野:なるほど……。なので、伊周の弟の隆家(竜星涼さん)が、残された敦康親王(一条天皇の長男で、定子さまの息子)の後見になると言いにきたとき、道長はすごく怖い顔をしていたわけですね…。それを感じ取った隆家も「それでも左大臣さまに仕える」とわざわざ伝えていました。 たらればさん:当時を生きていた人たちにとっては、一族の命運をかけた政争だったわけで、そうとう切羽詰まっていたと思います。これから、より政争が激しくなっていきますよ。 水野:まずは、一条天皇が譲位して次の天皇(三条天皇)が決まって、そこで次の皇太子である東宮を決めるんですよね。順当にいけば、一条天皇の長男にあたる敦康のはずですが、道長は彰子さまの実子で自分の孫である敦成(あつひら)を東宮にしたい、と。帝の思いをくみたい彰子さまは、敦康を東宮にするべきだと言うんですよね。次の予告で、道長に対して激怒していたので、バトルが始まるんだなと思いました。 たらればさん:それはもう激怒してもらうしかありません。 たとえば『源氏物語』で帝の子どもである光源氏は幼少期に臣籍降下していますが、そうは言っても光源氏は「二の君」、次男です。母(桐壺更衣)の身分も低い。だから「政争に巻き込みたくないので皇統争いから降ろす」という意向に説得力が出る。 一方、一条帝の正式な妻である皇后・定子さまから生まれた長男の敦康親王が、健康に問題があるわけでもないのに東宮にならない、というのは、当時の常識では「ありえないこと」です。それを道長はやろうとしている。 水野:ドラマの中では、「民のために社会をよくしたい」という大義を見失っていることに、道長が無自覚のように感じられます。今後はどのように描かれるんでしょうね……。 たらればさん:史実の道長は、一条天皇の次に天皇になる三条天皇(現在の居貞親王)への「当たり」もエグかったんですよね。三条帝がいる限り、自分の孫は天皇になれないわけなので。ここから闇落ち道長がアクセル全開になっていくはずです。震えて待ちましょう。 ◆これまでのたらればさんの「光る君へ」スペース採録記事は、こちら(https://withnews.jp/articles/keyword/10926)から。 <たらればさんが、朝日カルチャーセンターの講座『「枕草子」の煌めく世界―紫式部を鏡として』に登壇します。 『新訂 枕草子』の著者・河添房江さん、津島知明さんに、清少納言や「枕草子」のあれこれを聞いて深掘りします。 日時:10月26日(土)13時~ 申し込みはこちら(https://www.asahiculture.com/asahiculture/asp-webapp/web/WWebKozaShosaiNyuryoku.do?kozaId=7394695)から>