米財務省の新たな金融包摂戦略に暗号資産が盛り込まれず
米財務省は、国民が金融システムへのアクセスを得るのを支援するための新たな金融包摂戦略を設定したが、35ページの報告書では暗号資産(仮想通貨)に言及しているのは1回のみであり、しかもこの業界の危険性を指摘する財務省の取り組みをアピールする文脈においてだ。 カマラ・ハリス(Kamala Harris)副大統領は選挙活動の中で、経済政策の一環として暗号資産を奨励すると表明しているが、同副大統領が現在所属する政権は、来週の選挙前の財務省による暗号資産への言及としては最後のものになる可能性がある中で、デジタル資産を遠ざけている。 バイデン政権下の財務省は29日の報告書で、「研究の開発と促進によって金融包摂を育む」とし、そのために2022年に「デジタル資産に関連するリスク」についての報告書を発行したと言及した。 既に準備された発言を確認すると、ジャネット・イエレン(Janet Yellen)財務長官は29日にニューヨークで行われる銀行業界のイベントで、「安全で手頃な費用の金融商品と偏りのない情報へのアクセスは、すべてのアメリカ国民が金融的安定を追求するのに役立つ」と述べることになっている。発言の中で、同財務長官は新たな戦略における銀行業者らの「積極的なパートナーシップ」を呼びかける予定だ。 暗号資産(仮想通貨)セクターは当初から、金融への参入障壁が低いことを自らの存在意義としてきた。例えば、業界のロビイストが議員や規制当局に対してデジタル資産について説明する際、これが主要な売り文句の一つとなっている。しかし、国際送金が明らかに一般ユーザーにとっての暗号資産のユースケースであるにもかかわらず、財務省は業界の包摂に関する主張に動かされていないようだ。 アメリカン進歩センター(Center for American Progress)のようなリベラル寄りのグループは、暗号資産支持者による金融包摂に関するメリットをめぐる主張は「精査に耐えない」と論じており、ブルッキングス研究所(Brookings Institution)もその主張を否定しようとしている。 ハリス副大統領のオフィスが財務省の最新戦略に何らかの発言権を持っていたかは不明だが、ハリス氏の選挙活動で示された暗号資産への開放性とは対照的であるように見える。ハリス氏の対立候補であるドナルド・トランプ(Donald Trump)前大統領は最近示した暗号資産への熱意を2024年の選挙活動で重要部分に位置付けているが、トランプ氏が政権運営をしていた時期の米証券取引委員会(SEC)は、リップル(Ripple)の法的基盤を批判した最初の大きな訴訟を起こしている。 |翻訳・編集:林理南|画像:Jesse Hamilton/CoinDesk|原文:Crypto Ghosted in U.S. Treasury Department's New Strategy on Financial Inclusion
CoinDesk Japan 編集部