衝撃の発表から20年、謎多き「ホビット」フローレス原人はどんな人々でなぜ小さかったのか
「ホビット」はどこから来たのか
当初、リアンブアのチームは、ホモ・フロレシエンシスはより古い人類であるホモ・エレクトゥスの子孫であり、島で孤立した生活を送るうちに小型化したと考えていた。ホモ・エレクトゥスは、約200万年前にアフリカを離れた最も初期の人類種のひとつであり、約11万年前に絶滅したが、その前にインドネシアにまで到達していた。 リアンブア洞窟で発見された人類以外の化石に見られる極端な姿は、生物学者が「島嶼(とうしょ)化」と呼ぶ現象と一致する。島嶼化とは、島にすむ動物が小型化または大型化する現象のことだ。地理的な範囲が狭いこと、大型ネコ科動物のような大きな哺乳類の捕食者がいないことなどの要因が、進化上のこうした変化を引き起こすと考えられている。 ホモ・フロレシエンシスは、人類も孤立した環境下では島嶼化の影響を受けることを示唆しているように思われた。 しかし、この地域で見つかっている最も古いホモ・エレクトゥスの化石は、ホモ・フロレシエンシスの最古の化石とほぼ同時期のものだ。 また、フローレス原人の骨を調べた一部の考古学者によって、さらに古い人類の特徴が発見されている。ホモ・フロレシエンシスの足や手首などの部分は、200万年前のアウストラロピテクスやホモ・ハビリスといった、より古い時代の人類種に近いという。 これは、フローレス原人が初期人類の系統に属しており、何らかの方法でインドネシアにたどり着いたことを示唆している。しかし、これまでのところ、アフリカ以外の地域では、こうした初期人類の化石は見つかっていない。 「ホモ・フロレシエンシスがホモ・エレクトゥスの子孫であると主張する人々は、島嶼化によって体が小さくなったと考えています」と、カナダ、レイクヘッド大学の人類学者マット・トチェリ氏は言う。問題は、ホモ・フロレシエンシスやその祖先が時代とともに小型化していったことを示す一連の化石が存在しないことだ。 「一方で、私のように、ホモ・フロレシエンシスが小さいのは、彼らの祖先がもともと体も脳も小さかったからだという説の方が納得できると感じている人たちもいます」。そう語るトチェリ氏も、この説の場合であっても、このような初期人類がアフリカ以外の地域に生息していたことを示す化石の証拠が必要であることは認めている。