衝撃の発表から20年、謎多き「ホビット」フローレス原人はどんな人々でなぜ小さかったのか
「ホビット」は何者か
すぐに問題となったのは骨の年代だ。古い地質学報告書では、この骨が見つかった岩の層は1万8000年前のものとされており、現生人類がアフリカで出現した約30万年前からはかなり隔たりがある。 骨をさらに詳しく調べたところ、現生人類の子どもとの関連は否定された。この化石はそれまで発見されたことのない人類種のものであり、われわれやネアンデルタール人などの氷河期の人類よりも、むしろ200万年前の初期人類に似ていた。 2004年、リアンブアのチームはこの小さなヒト属(ホモ属)の親戚を、正式に「ホモ・フロレシエンシス」と命名し、学術誌「ネイチャー」に発表した。 この予想外の発見は、すぐに論争の的となった。2004年末、インドネシアの人類学者テウク・ヤコブ氏が、ジャカルタのインドネシア国立考古学研究センターに保管されていたホモ・フロレシエンシスの標本のほとんどを持ち去った。 これらの骨は発育上の障害がある現生人類のものであって、別の人類種ではないとヤコブ氏は主張した。また、発掘作業は科学的な基準を守らずに行われたという噂も広まった。 ヤコブ氏は結局、数カ月たってから骨を返却した。輸送中にいくつかの骨が破損しており、その経緯をめぐって、リアンブアチームとヤコブ氏との間で対立が起こった。このスキャンダルの深刻さに鑑み、インドネシア当局は2年にわたって、人々のリアンブアへの立ち入りを禁じた。 改めて行われた洞窟の調査では、さらに多くのホモ・フロレシエンシスの化石が見つかった。2015年までに、考古学者たちはこの場所で少なくとも15体の骨を発見している。 最新の放射性炭素年代測定からは、リアンブア洞窟に彼らがいたのは6万~10万年前だと推定され、別の遺跡から出土した石器類は、この初期人類が少なくとも100万年前には島に到達していたことを示唆している。 2024年8月6日付けで学術誌「Nature Communications」に発表された別の研究は、70万年前にはフローレス島に小柄な人類が住んでいたとしている。 ホモ・フロレシエンシスの化石が追加で発見されることは、この初期人類の正体を解明するうえで不可欠だった。専門家の中にはヤコブ氏のように、リアンブアの骨は、小頭症やダウン症候群などの疾患を持った現生人類のものであり、そのせいで体が小さくなり、頭蓋骨の形状が変わったのだと示唆する者もいる。 しかし、ホモ・フロレシエンシスの骨格は、どれも非常に一貫した特徴を有しており、これは彼らが病気やけがを患っていたのではなく、別の種であったことを示している。 それでも、人類学者たちを悩ませる謎はまだ残されている。それは、この初期人類がどのようにしてフローレス島にたどり着いたのか、そして、進化の系統樹のどこに位置づけられるのか、という問題だ。